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会社を売って何が悪い? 起業に崇高な理念など必要ない

2018年2月26日(月)16時03分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

起業に崇高な理念など必要ない

いざ起業しようと思うと、世の中をテクノロジーで変革させなきゃいけなかったり、コンピューターに強くなきゃいけなかったり、人工知能で何か高度な分析ができなきゃいけなかったり......みたいな雰囲気が醸成されて、チャレンジングな人はどんどんトライしていくのだろうが、起業は何か崇高なものであるような風潮になりつつある。

まるで、起業ではなく革命でも起こすかのようなマインドが求められているのが、今の起業マーケットだ。

僕は、「トマトを作って売るような感じで会社を作って売ればよいのに」と思う。

トマトを作るのに、崇高な理想など必要ない。トマトで世界を変革させる必要はないのだ。決してトマトをバカにしているのではない。起業するのに、崇高な理念や、世界を変革するような志は、とりあえず必要ないと言いたいのだ。

いつか本気で世界を豊かにするようなサービスを思いついて、それが心の底から一生をかけてやり遂げたいミッションだという確信があるのであれば、そんな素晴らしい起業はない。

でも、初めて起業する「起業ビギナー」に、そんなレベルの高い起業を求めるのは間違っているし、そもそもそんなことビギナー起業家にできるわけがない。

「トマトを作って売るように会社を作って売る」とは、生活する手段として起業し、そして作った会社を売却するということだ。

世の中に革命を起こすとか、世界を変えるまでいかなくてもいい。利用者をきちんと満足させて適切な対価を受け取る。たまには気温や台風の影響でトマトがダメになってしまうこともあるかもしれない。それでもめげずにがんばって育て、大手のスーパーや飲食店に買い取ってもらう。そこで得たお金で、自分や家族が幸せになる。

こんな「当たり前の起業」「当たり前の売却」が、今の世の中では受け入れられていない。起業インフラが整いすぎてしまったがために、一周回ってなんかおかしい方向に行ってしまっている。

トマトの世界では、当たり前にトマトを育て、当たり前に売却することが受け入れられているのに。

生活のためにトマトを作っている農家が批判されるなんて話は聞いたことがない。大事に育てたトマトをある日突然出荷しても、「金に目がくらんだのだ」などと後ろ指をさされることもない。トマトだと何も言われないことが、なぜ会社だとなんやかんや言われるのだろう。すごく不思議だ。

起業とは、まず、自分が幸せになるためにするものだ。自分が幸せになり、サービスを受けた人が幸せになり、従業員が幸せになり、ステークホルダーたちが幸せになり、自分の周りが徐々に徐々に同心円状に幸せになっていき、世界が変わるのはその結果だ。いきなり世界だけが変わるなんて話はありえない。

こんな当たり前の話が、今、世の中から見失われている。

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