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日本の大学教授は高額所得者か、一般サラリーマン並みか?

2018年2月2日(金)15時52分
松野 弘(千葉商科大学人間社会学部教授)

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出所:「独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準一覧(平成23年度)」から各国立大学法人の資料を筆者が編集。参考資料:国立大学職員日記(※空欄は該当者がいないか、もしくは1名の場合は個人が特定される可能性があるため非公開とされている)

欧米の一流大学教授と比べると

欧米の超一流大学(ハーバード大学・オックスフォード大学等)では、平均年収は2000万~4000万円前後である(最高額はDistinguished Professor=特別栄誉教授クラスか、それに近いクラスの教授の給与[年収]。また、一般に自然科学系やビジネススクールの教授の給与は他の分野と比べて高いとされている)。

日本の大学の給与(年収)は欧米の超一流大学ほど高くはないが、これらの大学が厳しい競争原理にさらされ能率給的な給与体系をとっていることからすると、さほど競争原理が反映されていない日本の大学教授の給与(年収)は、中程度の安定したレベルにあるということができるだろう。

ハーバード大学やコロンビア大学などの米国等の超一流大学の人気のある大学院(とりわけ、ビジネススクールや理系の人気分野等)に所属し、かつ、社会的評価の高いとされている大学教授陣は4000万~6000万円の高給をもらっていることもある。

とりわけ、医学系の有名教授になると、例えば、コロンビア大学皮膚科学センター長で臨床教授のD.N.シルヴァース教授の年収は何と約4億8000万円という大企業のCEO並みの報酬である(出典:The Best Schools, 10 Highest-Paid College Professors in the U.S. この金額には臨床医師としての報酬も含まれているものと推測される)。

英国のオックスフォード大学やケンブリッジ大学なども、教授クラスには日本よりはるかに高い給料(2000万~3000万円程度)を支払っているといわれている。

とはいえ、日本、欧米に限らず、大学教授の給料は高いと思われがちだが、一流企業の役員等と比べると実はそれほど高くない。

グローバル化の波の中で、欧米の超一流大学や民間の大手企業との人材獲得競争の側面からすると、こんな待遇ではとても優秀な教授陣を確保できるとは思えないといっても過言ではないだろう。日本の大学が生き残っていくためには、思い切った人材獲得のための投資をしなければならない時期にきていると思われる。

(備考:資料1は平成23年度のものであるが、大学運営交付金は年々減少しているので、国立大学法人大学の給与はほとんど上がっていない。したがって、最近の給与水準はほぼこのままであると思われる)

[筆者]
松野 弘
博士(人間科学)。千葉商科大学人間社会学部教授、千葉大学予防医学センター客員教授、東京農業大学客員教授等。日本大学文理学部教授、大学院総合社会情報研究科教授を経て、千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学を定年後、現職。『現代環境思想論』(ミネルヴァ書房)、『サラリーマンのための大学教授の資格』(VNC)、『大学教授の資格』(NTT出版)、『大学生のための知的勉強術』(講談社現代新書)など著作多数。

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