最新記事

リーダーシップ

エディー・ジョーンズに学ぶ「気配り」のリーダーシップ

2018年1月22日(月)17時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「君がコーチならどうするか?」

何を目指し、何をすべきか。この二つをすぐに与えてくれる上司がいたら、部下は何も考えなくていい。

その時はラクで居心地がよく、「いい上司に恵まれた」と思うかもしれない。

しかし、それではいざ自分がリーダーとなった時に戸惑うだけである。どう目標を見つけ、どう達成したらいいか、自ら決める訓練をしていないからだ。

優れたコーチは、たとえ時間がかかっても、「君がコーチだったらどうするか?」という問いかけを続ける。

もちろん、自分が答えを出した方が早いに決まっている。短期的には出るはずの成果も出せず、歯がゆい思いをすることもあるだろう。

しかし、その間もずっと「君がコーチならどうする?」という問いかけを続けていくと、選手たちはいつのまにか"リーダーの模擬体験"を何度も経験することになる。

結果、いざ本当にその立場になった時に、「今までずっと考えてきたことを実行すればいいだけ」という準備ができている。いつの間にかリーダーが育っているのだ。

たった一人のカリスマに頼らない、持続的成長が可能な強いチームができあがるレシピである。

一つの方法にこだわらない

熱心な人ほど陥りがちなのが、「自分はこの方法で行く」と決めた瞬間から、その方法に固執してしまうという失敗だ。

経験上、リーダーが身につけるべき資質の一つが、状況に応じて自分の立ち回りを変える柔軟性である。成果にこだわれば、自然とできる振舞いであるはずだ。

「自分のやり方」を一つの型に決め込まず、時には押し、時には引き、支え、待ち......といろいろな型をもって動き回る。

すると、様々な状況に応じた戦法をとれることになり、環境の変化に対する耐性も備わっていく。

ワセダラグビー部の監督を退任した時、雑誌の企画で「清宮・中竹比較」という特集が掲載されたことがある。

記事の中で、清宮監督の下で2年、私の下でも2年、コーチを務めていた人物がインタビューに答えていたのだが、彼は「結局、両監督とも同じでした」と言っていた。

世間一般のイメージでは真逆のタイプと言われてきたので、同席した編集者も驚いたようだ。あの清宮監督と同じと評されるとは、私にとっては光栄な賛辞でしかないのだが、元コーチはこう続けていた。

「日本一というゴールに向かって、様々な武器や技を出したり引いたり。振り返ると両監督は同じ考えで同じようなことをやっていたように思います」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中