最新記事

トレーニング

いま明かされる、ジム通い不要な「囚人トレーニング法」誕生秘話

2017年10月6日(金)17時12分
ジェフ・コーワン

出所後に人生を変えた

刑期を終えて出所すると、試練を乗り越えたウェイドは別人になっていた。

犯罪者の生活に戻るつもりはなく、アメリカを離れ、ロンドン郊外に移り住んだ。そこで刑務所での経験を、他のどの自重トレーニング・プログラムとも異なるフィットネスの形にまとめて、「ポール・ウェイドの囚人コンディショニング・プログラム」として発表した。

このプログラムを基に、ウェイドは本を2冊出版した。1冊目は『Convict Conditioning: How to Bust Free of All Weakness--Using the Lost Secrets of Supreme Survival Strength』(邦訳『プリズナートレーニング』山田雅久訳、CCCメディアハウス)、2冊目は『Convict Conditioning 2: Advanced Prison Training Tactics for Muscle Gain, Fat Loss, and Bulletproof Joints』(邦訳未刊)だ。

自重トレーニングの達人アル・カバルドとタッグを組み、安全にゆっくりと筋力を鍛えていくことを目的とした漸進的トレーニングを基に、高度な筋トレの手法を開発した。ウェイドはさらに3冊目の本に取り掛かっており、BreakingMuscle.comというサイトでは看板コーチを務めている。

今でもサバイバル・モード

ウェイドは出所後、もうドラッグの密売人には戻らないと誓った。何と言っても獄中では、自分の人生をどう変えるべきかを考える時間がたっぷりあった。密売人や常習者になって刑務所に戻るのではなく、自分の一生を、他の人たちが自身の肉体を使って最高の筋力を鍛えられるよう手助けすることに捧げることにした。

ウェイドが師匠から教わった知恵を人々に伝えていくなかで、こうした彼の遍歴はファンたちの支持を集めるようになった。

それでもウェイドは、いまだに"サバイバル・モード"にある。「ポール・ウェイドの囚人コンディショニング・プログラム」でフィットネス界のレジェンドとなった今でもだ。刑務所で過ごした日々と同じように、低姿勢を保ち、注目を集めないようにしている。

素顔を晒さず表に出てこないからといって、彼を責めることはできない。ウェイドは20年以上もの間、生き残るためにこの方法を貫いてきたのだ。『プリズナートレーニング――圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』に掲載された写真でモデルを務めた人物が、ウェイドを擁護すべく、次のように述べている。

「私は直接ポールに会ったことはないが、彼が実在の人物ではないと言われたら驚く。彼とは、数えきれないほどメールで何度もやり取りをした」

ちなみに、このモデルの男性も只者ではない。彼がポール・ウェイドのトレーニング原理に基づいて、9秒間の片手逆立ちを行っている姿を、以下の動画でご覧いただきたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中