最新記事
SDGs

カカオ豆の高騰が止まらない...チョコ産業の未来に不可欠な「持続可能な農法」

A Cocoa Crisis

2024年4月17日(水)19時40分
アレクサンダー・ファビーノ(経済・金融担当記者)
4Pと呼ばれる持続可能な農法を促進させることでカカオを守る FERLEY OSPINAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

4Pと呼ばれる持続可能な農法を促進させることでカカオを守る FERLEY OSPINAーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<密輸や環境破壊でカカオ不足が深刻な事態に>

チョコレートの主原料であるカカオ豆の価格高騰が止まらない。3月26日、先物価格が史上初めて1トン当たり1万ドルを超え、4月2日には1トン当たり1万294ドルという歴史的な高値を付けた。

背景には、カカオの二大供給国である西アフリカのガーナとコートジボワールでカカオの供給が逼迫していることがある。これが、地元農家から世界の消費者にまで影響を与えている。

ガーナ国内のカカオ豆の生産・流通管理を行う「カカオボード」が今年1月に発表した報告書によると、供給量が激減した主な要因は、コートジボワールやトーゴといった隣国へのカカオ豆の密輸だ。さらに、金の違法採掘が急拡大し、採掘者たちがガーナのカカオ畑を破壊したことも原因だ。

また、カカオ樹木が老齢化し生産できなくなった農園では、樹木がカカオ腫脹性シュートウイルスの感染に悩まされている。この感染病はガーナの総樹木数の約17%に影響を与え、23%は老齢で瀕死状態にあり収穫できない。カカオボードは3月下旬、昨年からのカカオ収穫量が多くて42万5000トンという、22年ぶりの低水準に減少するだろうと発表した。

気候変動も打撃を与えており、「エルニーニョ現象は西アフリカのカカオ栽培や、インドやタイの砂糖生産に悪影響を及ぼす」と、米シラキュース大学のパトリック・ペンフィールド教授は語る。

今年から来年にかけて、世界の「カカオ不足」は前年の7万4000トンから37万4000トンに押し上げられ、世界のカカオ生産量は前年比10.9%減の、444万9000トンまで激減すると予測されている。

そんななか、カカオ生産やチョコ産業の未来を決めるのは、持続可能な農法を支援する取り組みだ。カカオボードは農家に対し、「4P(定期的な剪定、革新的な受粉技術、土壌への鶏ふん使用、病気に対する保護の強化)」を促進するよう助言している。

ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ

ビジネス

ECB、米関税で難しい舵取り 7月は金利据え置きの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中