最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条

WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP

2023年1月12日(木)14時45分
ボリス・グロイスバーグ(ハーバード・ビジネススクール経営学教授)、サーシャ・シュミット(WHUオットー・バイスハイム経営大学院スポーツ経営センター長)、アブヒジット・ナイク(ファンドフィーナ社リスク・データ責任者)、ハリー・クルーガー(バイエルン・ミュンヘン戦略・事業開発担当)

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この研究では、全体で最も重要なポジションは左サイドバックであること、中盤で最も重要なのは左サイドハーフ(ウイング)で、センターバックで最も重要なのは左センターバックであることも分かった。

11人の相対的貢献度を見ると、ディフェンスでは左サイドバックの貢献度が12.23%で、右サイドバックは11.21%。攻撃を担う左サイドハーフの貢献度は7.76%だが、右サイドハーフは6.72%にとどまる。

左センターバックの貢献度は6.58%で、右センターバックは5.78%。ブロックでまとめてみると、平均的なディフェンダーの勝利への貢献度は10.54%だが、平均的なミッドフィルダーの貢献度は5.84%で、平均的なフォワードの貢献度も6.85%止まり。ゴールキーパーの貢献度は8.76%だ。

総じて左サイドの貢献度が高いことを考えると、カバー範囲が広い左利きの選手を獲得することが、チームの戦績向上につながると推論できる。大抵の選手は右利きだから、獲得候補の選手はそんなに多くない。

だが、左利きのディフェンダーが試合のカギを握ると考えられる以上、クラブが左利き選手の発掘と育成に力を注ぐのは合理的な戦略と言えそうだ。

ただ、右利きだが左サイドバックとして活躍した名選手もいる。10年W杯でドイツ代表の主将を務めたフィリップ・ラームは、プロデビューした当初は右サイドバックだったが、左に移り、最終的にはサッカー史上最高の左サイドバックの1人という名声を打ち立てた。

ラームは右利きのままこの偉業を成し遂げたが、98年W杯でイタリア代表の主将を務めたパオロ・マルディーニのように、才能と粘り強さで右利きから両利きとなり、左サイドバックとして活躍した選手もいる。

最後に、相対的貢献度で見落としてはいけないのは、監督の貢献度が9.77%と、左右のサイドバックに次いで3番目に重要な「ポジション」であることだろう。

サッカーは成功の予測が難しく、小さな物事が大きな違いをもたらすこともある。そこには経営者が学べることも少なくない。そこで、常勝チームをつくる上で重要なポイントをいくつか挙げておこう。

1. ディフェンダーは華やかなスポットライトを浴びにくいが、統計的に見ると、彼らこそが勝利の決め手となる。どんな部門や部署にも、こうした縁の下の力持ちがいるはずだ。表彰されるのは営業担当者かもしれないが、その売り上げを可能にする業務システムを構築してきたのはエンジニアなのだ。

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