最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条

WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP

2023年1月12日(木)14時45分
ボリス・グロイスバーグ(ハーバード・ビジネススクール経営学教授)、サーシャ・シュミット(WHUオットー・バイスハイム経営大学院スポーツ経営センター長)、アブヒジット・ナイク(ファンドフィーナ社リスク・データ責任者)、ハリー・クルーガー(バイエルン・ミュンヘン戦略・事業開発担当)

■最良のフォーメーションとは

分析の結果、チームのパフォーマンスへの相対的貢献度の高い上位5つのポジションは、左サイドバック、右サイドバック、ゴールキーパー、左サイドハーフ、右サイドハーフであることが分かった。

また、貢献度の高い順に上から11のポジションを並べて「チーム」をつくると、ゴールキーパー、3人のセンターバック、2人の守備的サイドバック、4人のミッドフィルダーと1人のフォワードという組み合わせになった。言い換えれば5-4-1のフォーメーションだ。

ブンデスリーガの平均的なフォーメーションは4-5-1だ。5-4-1は伝統的な戦術フォーメーションではないが、近年では使われることが増えている。ディフェンスの安定性と戦術的な柔軟性が高まるからだ。攻撃力に劣るチームが個人技に優れたチームと対戦する場合、ディフェンスの安定性は特に重要になる。

分析の対象となった期間において、5-4-1は対バイエルン・ミュンヘン戦で使われることが多かった(全体の44.44%)。ちなみにこの期間を含む全シーズンでバイエルン・ミュンヘンはリーグ優勝している。

国際試合においても、5-4-1を採用した弱小チームが快進撃を見せた例はいくつもある。14年のW杯ではコスタリカが5-4-1を使って準々決勝まで進出し、世界を驚かせた。04年の欧州選手権では、ギリシャがいくつかの試合で変則的な5-4-1を使って優勝した。

このフォーメーションが戦術的柔軟性を持つかどうかは、左右サイドバックの身体面および戦術面における能力の高さと強く関係してくる。攻撃時は3人のディフェンダーを残してフィールド中盤に入っていくため、全体のフォーメーションは3-6-1か3-4-3に近くなる。

私たちは各ポジションの勝利への相対的な貢献度も計算した。

すると、センターフォワード(ストライカー)よりもゴールキーパーのほうが貢献度は56.83%、左サイドバックに至っては118.88%も高いことが分かった。

ということは、フォワードの選手たちは、他の選手たちと比べて、チームへの貢献度以上に高い報酬を得ていると考えることもできる。私たちのモデルに基づく11のポジション(と監督)の相対的貢献度を44ページの表に示した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中