最新記事

日本経済

値上げしてもコスト高に追いつかず 苦戦する日本企業、来期の重しに

2022年2月21日(月)13時57分

Jオイルの服部広専務も「南米の乾燥気候によるブラジル、アルゼンチン産の大豆の生産量の減少懸念から大豆相場が15ドルまで上昇してきており、現在の状況が長期化する場合には、さらなる改定(値上げ)はあり得ると考えている」と述べている。

パナソニックの梅田博和最高財務責任者(CFO)は4月以降に家電を順次値上げすることを、花王の長谷部佳宏社長は衣料用洗剤や紙おむつを3月めどに値上げする方針をそれぞれ決算会見で明らかにした。

消費者と小売りの反応

しかし、デフレがしみついてきた日本で、これ以上の値上げが消費者に受け入れられるかは不透明だ。BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏はこれまで日本の値上げを振り返って「エネルギーと食料以外は値上げできていない」と指摘する。

総務省が18日に発表した1月の全国消費者物価指数は、エネルギー価格の上昇を主因に5カ月連続で前年を上回った。賃金も相応に上がらなければ消費の減退につながる恐れがあるが、2月のロイター企業調査で春闘への対応を質問したところ、基本給を底上げするベースアップを予定している企業は3割強にとどまった。

装置産業でもあるビール業界は、一定数量を出荷することが収益確保の上で重要となる。サッポロホールディングスの岩田義浩常務は10日の21年12月期決算会見で、値上げが数量減につながることを懸念。「値上げして数量がきちっと確保できなければ、コストの回収ができない」と述べ、市場の動向を慎重に見極める考えを示した。

紙おむつなどの値上げを表明した花王は、原材料価格の上昇が22年12月期の損益に110億円、物流費上昇で60億円の影響があるとみており、値上げやコスト削減で吸収したい考え。長谷部社長は3日の決算説明会で「戦略的な値上げをし、TCR(コスト削減)をすること、これを業界のリーダーシップを取ってやりたい」と語った。

首都圏を地盤とする食品スーパーのオーケー(神奈川県横浜市)は、花王の方針に「ノー」をつきつけた。低価格販売が売りのオーケーは、花王の製品約500品目のうち、1月末から145品目の取り扱いを中止している。

(清水律子 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東証がグロース市場の上場維持基準見直し、5年以内に

ビジネス

ニデック、有価証券報告書を提出 監査意見は不表明

ビジネス

セブン銀と伊藤忠が資本業務提携 ファミマにATM設

ワールド

トランプ氏、日韓の対米投資「前払い」 見解の相違と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性を襲った突然の不調、抹茶に含まれる「危険な成分」とは?
  • 2
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 5
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 6
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 7
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 8
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 9
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 10
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中