最新記事

コロナ禍

緊急事態宣言解除で人材確保に悩む飲食業 「第6波」か「機会損失」か

2021年10月1日(金)16時25分

東京・板橋区の住宅街にある居酒屋の店主は、店舗営業を再開するにあたり、冊子タイプのメニュー表をタブレット端末に変更することを検討しているという。除菌をしやすく、客との接触機会も減らすことができるとし、「感染対策の充実を採用のアピールポイントにしたい」と話す。

異業種間での取り合い

経済の回復過程では異業種間で人材の取り合いが起きるのも通例だ。

直近の日銀短観の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)をたどると、全規模・全産業は昨年9月調査でマイナス6となった後、じりじりと不足超幅を拡大してきた。1日発表の最新9月調査では足元がマイナス17、先行きはマイナス20と不足超幅がさらに拡大していくと予測されている。

労働経済に詳しい日本総研の山田久・副理事長は、建設、宅配関連、コールセンター、介護サービスなどで人手不足感があり、飲食業界が不安定な中で一定数の人材がそうした業種に流れた可能性がある、と指摘。その上で「飲食業がコロナ前のビジネスモデルを再構築し、安い賃金で人を集めようとしても戻ってこないのではないか」と話す。

コンビニもライバルに

採用面では、今後はコンビニエンスストアなどの小売りが飲食業の強力なライバルになり得るとの声もある。

かねてコンビニは店舗運営の多くを留学生など外国人材に頼っていたが、出入国在留管理庁がまとめたデータによると、コロナ禍で2020年の新規入国留学生は前年に比べて6割減った。人材業界に詳しいリクルートジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長は「本来なら一気に人手不足になるところだったが、日本の学生や主婦などが入ってくれたおかげで穴が埋まった」という。

コンビニは自宅の近辺にあることが多く、シフトも融通が利きやすい。チェーン展開していれば他の場所にある店舗も選択肢に入る。前出の宇佐川氏は「働き方の工夫や早期に戦力化する工夫がすでにできていて、上手に時間を使いたい人のニーズにもマッチしている」と話す。

経済産業省と総務省がまとめたデータによると、全国に約60万ある飲食業の事業所のうち6割が従業員4人以下の零細企業となっている。個人経営に近い店では大手チェーンなどに比べて人材面でフレキシブルに対応できないのが実情。前出の板橋区の居酒屋の店主はこう話す。「これまでも努力してきたが、さらに工夫が必要だ」。

(杉山健太郎、取材協力:浜田寛子 編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 6月から国

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

米FOMC声明全文

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中