最新記事

東京五輪

日本企業の約7割「東京五輪は中止・再延期」 経済効果・損失とも限定的

2021年5月21日(金)11時09分

5月のロイター企業調査によると、開催予定日まで約2カ月となった東京五輪・パラリンピックについて「中止」もしくは「再延期」すべきとの回答が69%にのぼり、2月調査から増加した。写真は1月、都内で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

5月のロイター企業調査によると、開催予定日まで約2カ月となった東京五輪・パラリンピックについて「中止」もしくは「再延期」すべきとの回答が69%にのぼり、2月調査から増加した。新型コロナウイルス感染症の収束が見えず、ワクチン接種も遅れる中、「中止」が37%と、「再延期」(32%)、「開催」(30%)を上回った。海外からの無観客が決まるなど景気の押し上げ効果は乏しく、中止の際の経済損失も限定的との見方だ。

調査期間は5月6日から17日まで。発送社数は482社、回答社数は229社程度だった。

東京五輪は「中止」が37%、「再延期」が32%で、約7割が今夏の開催に反対となった。緊急事態宣言が再発令されるなど、新型コロナの感染拡大の収束が見えていないことが最大の要因。開催による一段の感染拡大、医療への負担増などが懸念されている。「ずっと開催を望んできたが、ここまで封じ込めができていない現状から中止の英断が必要。開催した場合の感染等の反動は恐ろしい」(窯業)と、開催支持から反対に転じざるを得なかったとする声や「参加できない国が増加すると想定される」(小売り)と、海外の感染状況も含めて開催を懸念する指摘もあった。

一方、昨年11月に68%あった開催支持は、今年2月に35%、そして5月調査では30%にまで低下した。「観客を入れなければ、コロナ感染拡大との因果関係は相当低下すると思われる」(情報サービス)と、開催する場合でも、無観客を条件とする回答が多い。

すでに、海外からの観客は入れないことが決まっているほか、関係者の数も絞り込まれ、行動制限も厳しくなる。開催された場合、何らかの景気押し上げ効果を見込む企業は4割強となった。一方で「今開催しても人の出入りは限定されるため、当初の経済効果は期待できない」(輸送用機器)など、押し上げ効果は限定的にとどまるとの見方が過半数を占めた。さらには、開催後に感染が拡大することなどを懸念し「むしろ景気押し下げになる」との回答も7%あった。

中止となった場合、「これまでの投資が回収できない」(建設)として、「大きな経済損失」になるとの回答は26%。開催による経済効果が限定的な以上、損失も限定的とする見方は59%と多く、経済損失はあまりないとの回答(13%)と合わせて、7割以上の企業が中止による損失はそれほどでもないとみている。

「コロナを徹底的に抑え込んで経済のV字回復につなげることができる」(食品)として、「むしろ景気を押し上げる」との回答も2%あった。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 5
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中