最新記事

仮想通貨

ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

TOO BIG TO FAIL?

2021年4月14日(水)18時56分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

210413P18nyse_BCN_03.jpg

ニューヨーク証券取引所 LUCAS JACKSONーREUTERS


18年1月、ノボグラッツはギャラクシー・デジタルという会社を立ち上げた。その目標は、「仮想通貨界のゴールドマン・サックス」になること。つまり、「業界で一番頭のいい人間」が仮想通貨の取引業務やコンサルティング業務、そして投資銀行業務を提供する会社になることだ。そのためには、ビットコインが永久資産として金融業界のメインストリームに認められる必要がある。

そこでノボグラッツのチームは、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長を説得して、ブルームバーグの金融情報サービスに「ブルームバーグ・ギャラクシー仮想通貨インデックス(BGCI)」を作ってもらった。これはビットコインやイーサリアム、リップルなど主要な仮想通貨の値動きを示す指数で、ブルームバーグの端末を利用する世界30万人以上の金融業界関係者に、「仮想通貨はもう怪しい資産ではない」と思ってもらう効果があった。

メインストリームの金融機関の関心が高まると、ビットコイン投資に必要なインフラを提供する企業が続々と登場するようになった。なかでも重要なのは、ニューヨーク証券取引所などを傘下に置くインターコンチネンタル取引所(ICE)が、18年8月に立ち上げた子会社バックトだろう。CEOを務めるのはジェフリー・スプレチャーICE会長の妻で、後にジョージア州選出の上院議員を務めたケリー・ローフラーだ。

バックトは、ビットコインのカストディアン(保管機関)としてニューヨーク州当局の許可を得ただけでなく、ビットコインの先物取引を行う許可も取得した。この先物は、19年9月にICEに上場すると、1年後には1日の取引高が1万5955BTC(当時の価値で2億ドル)にも達するようになった。

フェイスブックの人気者であるタイラーとキャメロンのウィンクルボス兄弟が立ち上げた仮想通貨取引所ジェミナイ・トラストも、仮想通貨の怪しいイメージを払拭する上で大きな役割を果たした。なかでも重要だったのは、ジェミナイが19年9月にノア・パールマンを最高コンプライアンス責任者に採用したことだ(現在は最高執行責任者)。

パールマンは米麻薬取締局(DEA)の法務顧問や、連邦検事補、モルガン・スタンレーのマネジングディレクターといった経歴の持ち主で、金融業界だけでなく、規制当局のマインドセットにも精通していた。仮想通貨取引所コインベースのブライアン・ブルックス最高コンプライアンス責任者も、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)の法務部長を務めた経験がある。

ブルックスは、コインベースに2年間勤めた後の20年、米通貨監督庁(OCC)の上級通貨監査官および最高執行責任者(COO)に就任した。OCCは財務省傘下の政府機関で、アメリカの大手金融機関を監督するとともに、連邦レベルの営業免許を与える権限を持つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中