最新記事

仮想通貨

ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

TOO BIG TO FAIL?

2021年4月14日(水)18時56分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

最初にビットコインを受け入れたのは、中央集権的な政府に強い不信感を抱くクリプトアナーキスト(暗号自由主義者)や自由意思論者(リバタリアン)、シリコンバレーの理想主義的なエンジニアたちだった。

違法行為に手を染めようとする勢力にとっても、匿名で簡単に送金できるビットコインの魅力は大きい。実際、多くのアメリカ人が初めてビットコインの存在を知ったのは、FBIが13年に違法薬物などのオンライン闇市場「シルクロード」を摘発したときだった。

シルクロードの摘発から程なく、ノボグラッツは思いがけず、ウォール街のビットコイン強気派の代表格と見なされるようになった。当時は、550億ドルの資金を動かすフォートレス・インベストメント・グループのマクロファンド共同最高投資責任者を務めていた。

あるパネルディスカッションに参加したときのこと。聴衆から投資について質問があった。ノボグラッツはこのしばらく前に、約300万ドルの個人資金でビットコインを購入していた。そのとき、相場は1BTC=100ドルに届いていなかった。

この質疑応答でノボグラッツは、ビットコインが1000ドルまで上昇するとの予測を示した。根拠として挙げたのは、中国人が好んでいるように見えること、クリプトアナーキストたちが前のめりになっていること、そして金融当局への不信感が強まっていて、ハイパーインフレを恐れる人が増えていることなどだった。

13年10月、フィナンシャル・タイムズ紙に「トップクラスのヘッジファンドマネジャー、ビットコインを支持」という記事が掲載された。ノボグラッツのことだ。たちまち、テレビ番組の出演依頼や講演依頼が大量に舞い込んできた。それだけ当時の主流派メディアや金融業界では、ノボグラッツのような考え方が珍しかったということだ。

その後、ビットコインの価格が1000ドルに上昇して、ノボグラッツの保有分の価値は300万ドルから3000万ドルに膨らんだ。このときノボグラッツは、一部を処分してプライベートジェットを買おうかと本気で迷ったが、フォートレスの仲間に説得されてやめたという。

やがてフォートレスの経営が悪化したため、ノボグラッツは15年に会社をやめて、フォートレスの持ち株を処分した。おかげでカネはたっぷりあるが、金融業界のメインストリームには相手にされない失業者になってしまった。そこでノボグラッツは、プリンストン大学時代の友達で、仮想通貨イーサリアム・プロジェクトを率いるジョセフ・ルービンに連絡を取ってみることにした。

ちょうどその頃、ルービンはイーサリアムのアプリを開発するコンセンシスという会社を立ち上げたところだった。ブルックリンにあるコンセンシスのオフィスを訪ねたノボグラッツは、「あれが大きな転機になった」と、振り返る。「『なんてこった、これは単なる業界じゃない。革命だ』と確信した」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英外相がシリア訪問、人道援助や復興へ9450万ポン

ワールド

ガザで米国人援助スタッフ2人負傷、米政府がハマス非

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師、攻撃後初めて公の場に 

ワールド

ダライ・ラマ「130歳以上生きたい」、90歳誕生日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中