最新記事

日本企業

「会社が従業員を守ってる!」 コロナ禍のJALやANAの対応に欧米が感動する理由とは

2021年3月8日(月)12時33分
谷本 真由美(著述家、元国連職員) *PRESIDENT Onlineからの転載
JALとANAのロゴ

ロイター/Toru Hanai


海外で日本型経営の再評価が進みつつある。イギリス在住で著述家の谷本真由美氏は「新型コロナ危機の直後、欧米の航空会社は従業員を大量解雇した。一方、JAL、ANAは従業員を解雇しなかった。欧州では『情』がある対応だと話題になった」という----。

本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない2 未曽有の危機の大狂乱』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

日本は「みなさんへのお願い」だけで絶望的な状態を免れた

外国人観光客の入国をそれほど制限もせず、厳しい都市封鎖を行わず、世界でもっとも高齢化が進んでいて重症化のリスクが高いのにもかかわらず、医療制度をギリギリで守ってきた日本の新型コロナ対策──。

世界有数の超高齢国家という、もっとも厳しい条件であった日本が、政府の「みなさんへのお願い」だけで絶望的な状態を免れたというのは本当に驚くべきことです。

イギリスではロックダウンして一カ月強が経った2020年5月はじめ頃から一気に死者が激増し、政府の場当たり的な対応に不満があちこちで噴出しはじめました。

高齢者や中年以上の人がよく見ている民放、ITVが毎朝放送しているニュース番組「Good Morning Britain」や、その後に放送されるワイドショーは、普段は芸能人のゴシップや料理の話題を放送することも多いのですが、この頃から政府の対策を強く非難する声が目立ちはじめました。

その一方で同時期に増えたのが、日本をはじめ韓国や台湾の新型コロナ対策を評価する番組です。

Twitterに見る日本称賛の嵐

イギリスでは、民放のチャンネル4でリポーターを務めるキアラン・ジェンキンス氏が5月11日、自身のTwitterで日本とイギリスの死者数を比較したところ、6.3万件もの「いいね!」がつき、たちまち話題となりました。


@C4Ciaran
日本の人口 1億2600万人
コロナ死:624人
イギリスの人口 6600万人
コロナ死:3万1855人
これは、どんな見積もりだったとしても驚くべき結果だ(原文はThis is staggering by any estimation.)。

日本の人口はイギリスの2倍近いのに、死者はたったの624人です。イギリスの死者数は「公式」には3万人強で、しかもこの数字は、自宅や老人ホームでの死者数を含めていません。実際には、死者は6万人を超えるといわれており、そうなると、日本の100倍以上もの数字になります。

ジェンキンス氏の"by any estimation(どんな見積もりだったとしても)"には、「統計の方法の違いや、公式発表以外の死者数を加えたとしても」という意味が含まれています。実際、日本で行われた検査数はイギリスに比べて少なかったという事実はありますが、そうした点を考慮に入れても「日本の対策には一定の効果があり、どうやらうまくいっているようだ」と、大半の人が考えていたのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中