最新記事

コロナと脱グローバル化 11の予測

D・アトキンソン「日本の観光業復活は『検査』に懸かっている」

TOURISM NEVER DIES

2020年9月4日(金)11時20分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)

コロナ後はこれまで以上に富裕層誘致がカギ(写真は羽田空港) MICHAEL H-STONE/GETTY IMAGES

<世界の観光業はコロナ禍で大打撃を受けているが、人が旅をやめることはない。今後は富裕層から順に回復していくだろう。ただし、日本は「観光立国4条件」を満たす国だが決定的な問題がある。本誌「コロナと脱グローバル化 11の予測」より>

コロナ禍で脱グローバル化が起こるという議論があるようだが、そんなことは起こり得ないだろう。これまでにもペストやコレラなど、パンデミック(世界的大流行)は何度も起こったが、グローバル化が止まったことはかつて一度もなかった。
20200901issue_cover200.jpg
観光には「人の移動」が前提となるが、人類はある意味で、地球に誕生してからずっと移動してきた。アフリカにいた人類の祖先が気候変動の影響で絶滅の危機に瀕し、住む土地を求めてアジアやヨーロッパに移動したという世界史的事実が正しいとすれば、人間というのは移動する動物だ。つまり、人類の歴史は「観光」から始まったとも言える。

とはいえ、新型コロナウイルスが蔓延し、どの国でも観光業は止まっている。渡航が制限され、今年1~4月の国際観光収益は1950億ドルもの損失だ。グローバル化の潮流は変わらないが、影響は確かにある。世界観光機関は2017年、30年までに世界で18億人が外国旅行をすると予想していた。だが観光業は成長著しく、最近までその数は20億人を超えるのではないかと言われていた。この20億人はさすがに達成が難しくなり、当初の18億人程度にとどまるのではないか。

コロナ禍が世界の観光業にどのように影響するかといえば、業界の調整が進むとみている。調整される対象は「格安」だ。格安運賃の航空会社や、ぎりぎりの採算で経営している宿泊業などは生き残るのが難しい。私は最近、日本には低単価・低付加価値の企業が多過ぎて、これらの企業の生産性を上げなければならないと各地で訴えているが、それと通じるところがある。

【関連記事】「日本企業は今の半分に減るべきだ」デービッド・アトキンソン大胆提言

復活のためにPCR検査を

私は「おもてなし」などといった曖昧な概念に頼った日本の観光政策に疑問を抱き、15年に『新・観光立国論』、17年に『世界一訪れたい日本のつくりかた』(いずれも東洋経済新報社)という本を上梓した。観光大国になるには気候・自然・文化・食事の4条件を満たす必要があるが、日本はそれら全てを備えた国であり、データに基づいた政策を立てて実行すれば、世界有数の観光大国になれると訴えた。

ここ数年、日本の観光政策は随分と是正されてきていたと考えている。訪日観光客数も、15年の1974万人から19年には3188万人へと目覚ましい伸びを見せていた。世界で観光業の再開がいつ始まるかは政治的判断に左右されるので、私には分からない。それでも、日本が観光立国の4条件を満たしていることは今後も変わらない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:雪解けは本物か、手綱握りなおす中国とロシア向

ワールド

米、イラン新指導者モジタバ師ら巡る情報提供に最大1

ワールド

トランプ氏、イラン濃縮ウランのロシア移送案拒否 プ

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ約120ドル安 原油高でイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 10
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中