最新記事

コロナと脱グローバル化 11の予測

D・アトキンソン「日本の観光業復活は『検査』に懸かっている」

TOURISM NEVER DIES

2020年9月4日(金)11時20分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)

だが、観光業がどの程度回復するかという範囲に関しては、問題が2つある。1つは需要ではなく供給の問題。先ほど述べたように、格安航空会社などが倒産する可能性がある。

もう1つは感情・心理的な問題で、これはたぶん日本に特有だろう。政府はこの夏「Go Toトラベル」キャンペーンを打ち出したが、東京からは来てほしくないという感情が地方で爆発してしまった。全員が感染者であるわけがないのに、一緒くたにされて怖がられた。客観性も根拠もない暴論だが、とりわけ日本では起こりがちだ。

理由は明快で、PCR検査の体制が整っていないから。陽性なのか陰性なのかが分からないから、東京から来る人は全員感染者と捉えられてしまう。大きな批判を受けたGo Toキャンペーンの最大の問題は、その時期ではない。問題の本質は、検査体制などの不備だったと思う。

ただし、外国から日本に来る人は、出発前と到着後の少なくとも2回検査される。そうすると将来的に、国内に住む日本人より、海外の外国人に来てもらうほうが実は観光地にとってリスクが少ないという皮肉な状況になりかねない。インバウンドにせよアウトバウンドにせよ、あるいは国内旅行にせよ、検査が旅行の条件になるはずだ。究極的には観光業の回復は検査に懸かっている。

国同士の交渉次第だが、世界の観光業ではまずプライベートジェットで来るような富裕層、その後ビジネス客、FIT(海外個人旅行)の順に制限が緩和されていくだろう。あとは格安の団体旅行、つまりマスマーケットがどれだけ回復するか。クルーズ船は最後ではないか。

富裕層誘致の戦略に関しては、コロナ禍以前から日本は力を入れ始めていた。中国などアジアからの訪日客を大幅に増やす戦略を世界中から満遍なく来てもらう戦略に変え、大きな成果を上げていた。今後の課題は、欧米やオセアニアなど遠方から来る人と、世界の富裕層をいかに増やしていくかだ。遠方からの観光客は長く滞在し、多くのお金を落とすことがデータから分かっている。

「超過死亡」のデータ公表も

政府は20年に訪日客4000万人、消費額8兆円、そして30年には6000万人、15兆円という目標を掲げていた。人数だけを目標に据えるのではなく、観光客1人当たりの消費額を上げる戦略だ。実際その成果は上がり始めていて、訪日客数に占めるアジアの比率は昨年まで2年連続で下がっていた(例えば18年、アジアからの観光客は対前年比8.3%増だったのに対し、ヨーロッパは12.7%増、北米は10.4%増、オセアニアは11.7%増)。

【関連記事】日本の観光地、なぜこれほど「残念」なのか 優先すべきは情報発信より中身の「整備」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドのゴア州、16歳未満のSNS規制検討 豪禁止

ビジネス

インドネシア株7%安、MSCIが投資適格性リスク軽

ビジネス

スペースX、6月のIPO検討と英紙報道 評価額1.

ワールド

ECB、ユーロ一段高で再利下げ検討の可能性=オース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中