最新記事

感染症対策

新型コロナのワクチン開発、中小バイオ企業から遠のく投資家の期待

2020年7月5日(日)12時08分

米株式市場では、新型コロナウイルスワクチンの開発競争を巡って、投資家は大量製造が可能な大手製薬会社に期待をかける傾向が強まりつつある。写真はファイザーのロゴ。ニューヨークで2019年7月撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

米株式市場では、新型コロナウイルスワクチンの開発競争を巡って、投資家は大量製造が可能な大手製薬会社に期待をかける傾向が強まりつつある。つまり、小規模なバイオテクノロジー企業と投資家の「蜜月関係」が終わりを迎えるかもしれない。

いち早くその兆しが見えたのが1日で、新型コロナワクチンの臨床試験で有望な結果が出たと表明したファイザーの株価が3%強も急伸。一方、同社と共同で試験を実施しているドイツのバイオ医薬品ベンチャー、ビオンテッの株価は横ばいにとどまった。

またこのニュースを受け、以前から臨床試験で前向きな結果を出してきたモデルナ、イノビオ・ファーマシューティカルズといった中小勢の株価はそれぞれ4%と25%の下落となった。

過去1週間単位でも、新型コロナワクチン開発競争に参戦している大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)とメルクの株価は、いずれもイノビオとモデルナをアウトパフォームしている。

もちろん中小勢が売られたのは、これまでの値上がり分を四半期末に益出しした面はある。何しろモデルナの年初来上昇率は200%近く、イノビオに至っては540%に達し、大手製薬の値上がりとは比べものにならない。

ただアナリストによると、投資家は銘柄選別に際して、ワクチンを開発できるかとともに、どれだけ製造できるかに焦点を当てて、資金を振り向ける戦略に転換しつつある。そのためこれまで素晴らしい値動きを見せてきた一部のバイオテクノロジー企業のリスクリワード比率(損益率)が低下してきたという。

みずほのバイオテクノロジーアナリスト、バミル・ディバン氏は、ファイザーやアストラゼネカ、J&Jなどが成功を収めれば、これらの企業の規模や製造能力を踏まえると中小勢はより厳しい事態になるとの見方を示した。

リーガル・アンド・ゼネラル・グループのポートフォリオマネジャー、ジャスティン・オニュエクシ氏も、中小勢は製造能力が限られている以上、ワクチンを開発しても会社自体かあるいはワクチンの権利を大手に買収されてしまう、と投資家からみなされていると指摘した。

(Carl O'Donnell記者、Sujata Rao記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・新型コロナのワクチンはいつになったらできる?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200707issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月7日号(6月30日発売)は「Black Lives Matter」特集。今回の黒人差別反対運動はいつもと違う――。黒人社会の慟哭、抗議拡大の理由、警察vs黒人の暗黒史。「人権軽視大国」アメリカがついに変わるのか。特別寄稿ウェスリー・ラウリー(ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

レバノン各地でイスラエルの空爆、首都中心部で少なく

ワールド

カブールのリハビリ施設爆撃、死者数は143人=国連

ビジネス

テンセント、第4四半期は13%増収 ゲームとAIが

ビジネス

春闘に「手応え」、中小の賃上げ持続には適切な価格転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 4
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 5
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 6
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 7
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中