最新記事

ビジネス

奇抜な名前の高級食パン店を大ヒットさせたプロデューサー、そのノウハウを明かす

2020年7月13日(月)11時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

全国に5店舗を展開する高級食パン専門店「考えた人すごいわ」の横浜菊名店(『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』口絵より)

<高級食パンブームの仕掛け人にして、繁盛請負人。ベーカリープロデュ―サーを名乗る岸本拓也氏は、なぜ独特なネーミングのパン屋を作り、どうやって行列店にするのか。成功の秘訣は「人生の棚卸し」そして「データと感性のかけ算」だという>

「考えた人すごいわ」
「キスの約束しませんか」
「生とサザンと完熟ボディ」
「あらやだ奥さん」
「おい! なんだこれは!」

意味が分からないだろうが、これらは全て、パン屋の店名である。それも、高級食パンの専門店だ。

不思議な店名のパン屋......。一体どんな人が考えたのだろうか?

ベーカリープロデュ―サー、岸本拓也。

kangaetahito20200703-7.jpg

岸本拓也氏 写真:本人提供

彼こそがこれらのパン屋をプロデュースした人物であり、全国に広がっている高級食パンブームの仕掛け人でもある。新しくパン屋を始める人に向けて、開業のサポートやプロデュ―スをする会社を経営し、これまでに国内外で160店舗以上を手掛けてきた。

kangaetahito20200703-2.jpg

オープン初日から行列を作った「考えた人すごいわ」清瀬店の外観(『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』口絵より)

岸本氏がプロデュースしたパン屋は、その独特なネーミングから話題になるだけではない。開業から時間がたっても飽きられることなく、行列を作り続けているという。そのため、「ガイアの夜明け」(テレビ東京)に出演するなど、ビジネスパーソンとしても注目されている。

繁盛請負人とも呼ばれる岸本氏だが、このたび著書を出版した。その名も、『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』(CCCメディアハウス)。自身の経験と考察から生まれた「売れちゃう法則」を、マーケティング、ブランディング、プロモーションの面から提示するビジネス書だ。

kangaetahito20200703-3.jpg

「考えた人すごいわ」の高級食パンは素材や製法、コンベクションオープンなどにこだわっている(『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』口絵より)

事業を始める人に「人生の棚卸し」を勧める理由

何のために独特なネーミングにするのか。そんな店名のパン屋をどうやって繁盛させるのか。こうした疑問が頭に浮かぶが、岸本氏がまず述べるのは「金儲けだけをゴールにしてはいけない」という心構えだ。

もちろん、ビジネスとしてお店を出すからには、お金をもらうのは当然のこと。しかし、金儲けだけをゴールにしている人、おいしい話につられてしまうような人で、成功している人を知らないと彼は言う。

金儲けをゴールにしても、最初の一瞬は儲かるかもしれない。しかし、商品の魅力を深掘りしようとしなくなるため、あっという間に飽きられて他店に抜かれてしまうのだ。

事業を成功させるには、商品作りの技術という縦軸の深掘りに加え、「自分は何をやりたいのか」という横軸の「コンセプト作り」が大切だと、岸本氏は言う。そうでないと「なぜ、この仕事をやるのか」という本質を見失い、目先の利益に走ってしまうことになる。結果的に、割に合わない事業になりかねない。

そこで、事業を始める際に岸本氏が勧めているのが「人生の棚卸し」だ。自分の本質が何であるかを自問自答し、自分らしさを見つける作業である。彼がプロデュースする店のオーナーにも、必ずこの話をするという。ちなみに岸本氏自身のコンセプトは「パン屋で街を元気にする」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円一時10カ月ぶり安値、片山財務相の

ワールド

イスラエルがガザ空爆、25人死亡 停戦違反巡る応酬

ワールド

米・サウジ、2700億ドル規模の新ビジネス契約=ト

ビジネス

エヌビディア、第4四半期売上高見通しが予想上回る 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中