最新記事

日本社会

コロナショックに直撃された非正規女性 仕事失い生活も苦しく

2020年6月12日(金)12時45分

「ショックだった。別に休みたくて休んだわけじゃなく、休まざるを得なかった。リモートさえやらせてもらえず、自宅待機しかできない。その選択肢しかなかった。今まで一生懸命働いてきたのは何だったのだろうと。今までやってきたことは意味なかったな、と裏切られた感じがした」と、Aさんは語った。

幸い、Aさんはその後別の仕事を見つけ、7月からはそこで働くことになっている。

2歳の娘を持つ小林さん(34)は、パートで医療関係の事務をしている。子どもは保育園に預けているが、新型コロナで仕事が増えて忙しくなり、残業すると保育園の延長料金がかかるため支出が増えているという。また、病院で仕事をしているため周りの目も気にせざるを得ない。

小林さんは3年間別居している夫との間で離婚が成立していないため、一人親への政府の支援が受けられない。夫から養育費をもらっていないので実質的にはシングルマザーだが、セーフティネットで拾われない立場にある。朝から晩まで仕事と育児に追われ、「毎日が綱渡りの生活で、不安は尽きない」という。今は残業が思うようにできていないため、「今後、それを理由に切られる可能性があると思う」と話した。

非正規のシングル一人暮らし

非正規で働く独身一人暮らしの女性たちも、セーフティネットからこぼれ、貧困に陥りやすい層に当たる。

大阪に住む美雪さん(53)は派遣社員として農業用機械を製造する工場で10年前から働いてきたが、4月中旬に、新型コロナによる影響を理由に5月末で契約を打ち切ると言われた。派遣会社からは別の仕事を紹介され、早く受けた方がいいと言われて工場を辞めたが、応募した会社の募集はキャンセルとなった。数日後、製薬会社で派遣の仕事が見つかったが、収入は以前の半分に減った。その仕事も7月末までの契約だ。

「仕事がない不安から余分な出費を抑えなければいけないということで、車を手放した。涙が出た。ここまでしないといけないかな、と思って」と語る。特別給付金は申請したが、まだ届いていない。「一回きりもらったぐらいでは、一日一日生きていかなければいけない者としては、ちょっとしんどい」と話す。

和光大学名誉教授の竹信三恵子氏は、一人暮らしの非正規雇用の女性が支援を受けにくい理由について、日本では「もともと男性が生活費を稼ぎ、女性が足りない部分を補うという働き方(が主流)だったため、女性が失業しても夫の安全ネットがあるからそんなに問題はないと思われている。経済が悪くなったら解雇すべき人たちだと思われている。でも実は違う」と指摘する。

野村浩子氏の試算によると、配偶者のいない約130万人の女性が不安定なパートで生計を立てており、「コロナ渦は、こうした非正規女性の生活を揺るがしている」。さらに非正規雇用で働く女性の約7割が年収150万円未満(2017年「就業構造基本調査」)であり、独身一人暮らしだと当座を乗り切る現金の貯えがあるとは考えにくい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン高濃縮ウラン、イスファハン核施設でなお保管=

ビジネス

トランプ米大統領、買収争奪戦中にネトフリとワーナー

ワールド

レバノン、米に和平仲介を要請 イスラエルとの戦闘終

ワールド

トランプ氏、イラン石油押収に含み 新指導者選出「大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 10
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中