最新記事

日本経済

日本のGDP4─6月期はマイナス20%で戦後最悪へ テレワークなどデジタル化苦戦で脱コロナは数年も

2020年5月18日(月)12時18分

18日に発表された1─3月期の国内総生産(GDP)段階では年率1桁の減少にとどまったが、新型コロナウイルスの影響が本格的に出てくる4─6月期は20%前後の落ち込みが予想され、日本経済は戦後最悪の状態となりそうだ。写真は5月14日、東京の新宿で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

実質国内総生産(GDP)は1─3月期の段階では年率1桁の減少にとどまった。ただ、新型コロナウイルスの影響が本格的に出てくる4─6月期は20%前後の落ち込みが予想され、日本経済は戦後最悪の状態となりそうだ。緊急事態宣言の解除後も、経済規模がコロナ前の水準に戻るには1年以上かかるとの見方もある。感染防止と経済再生のキーは「デジタル化」だが、政府や企業にとって苦手分野である現状が浮き彫りとなっている。

4─6月期、大恐慌との比較に

「1─3月より4─6月は厳しい状況になる。戦後最悪の危機といえる」──内閣府幹部は、リーマン・ショックより経済悪化は深くなり、長期化すれば金融システムに波及する恐れもあることから昭和大恐慌と比較する方が適切だとの認識を示している。当時は世界大恐慌の波に飲まれ、日本でも経済と金融システム崩壊が起きた。

エコノミストの経済見通しを集計した5月の「ESPフォーキャスト」調査では、4―6月期のGDPはマイナス21.3%もの減少が予想されている。安倍晋三首相がいう「戦後最悪」の経済状況とは、比較可能なGDP統計で、戦後これほどの落ち込みがなかったという意味だろう。

政府は、緊急経済対策などが2021年にかけてGDPを4.4%押げ上げる効果があると試算しているが、実際は人々の行動次第でもあり、不透明な点が多い。

ESP調査では7―9期のGDPは8%台に上昇する見通しだが、3四半期連続の大幅なマイナスの後にしてはかなり小幅な伸びにとどまりそうだ。内閣府としては、元の水準に戻るには相当時間がかかり厳しい経済状況が続くとの見立てだ。

20年度を通してみても、大方の調査機関が5%を超えるマイナス成長となるとの見通しを示す。リーマン・ショックのあった08年度のマイナス3.4%と比較しても、相当深い落ち込みになりそうだ。

一部の地域では5月14日に緊急事態宣言が解除されたが、「需要はすぐには戻らない」と前出の内閣府幹部はみている。

第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストの試算では、コロナ感染リスクの影響に伴う経済損失額は5月31日までで合計額を45兆円。緊急事態宣言が39県で解除されても、7.4兆円を改善させるに過ぎないという。

熊野氏は、感染リスクが再燃する可能性が残っていることを考えると、政府も一気に需要刺激策をとったり大型公共事業を積み増して総需要政策をすることはしばらく手控えざるを得ないともみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米5月PCE価格、前年比2.3%上昇 個人消費支出

ビジネス

米中、希土類輸出巡る対立解消 ジュネーブ合意の履行

ビジネス

中国人民銀、経済状況に応じて効果的に政策対応 金融

ビジネス

利下げ今年2回予想、一時停止の可能性も=ミネアポリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中