最新記事

感染症対策

イタリア、企業はもう体力の限界 高まる新型コロナウイルス「都市封鎖」解除の圧力

2020年4月12日(日)11時03分

企業が政府に圧力

大半の企業は、公衆衛生の観点からロックダウンの必要性を認めている。ウイルスの拡大が沈静化する前に制限措置が解除されたとしても、人々が家を出て経済活動に従事しようという自信を持てなくても無理はない。

世界保健機構(WHO)は7日、制限措置の解除を焦らないよう各国に呼びかけた。

イタリアをはじめとする各国で多くの人が懸念しているのは、科学的な知見が週を追うごとに変化している中で、どのようにして安全に制限措置を緩和するかという、確固たるプランが自分たちの政府にないように見えることだ。

ユーロ圏第3位の経済大国であるイタリアでは、企業各社が政府に対し、ロックダウン措置の段階的な緩和計画をまとめるよう迫っている。

ビチェンツァで電子機器・電子部品、ソフトウエアを製造するセルテック・エレットロニカ社の創業者ステファノ・ルアロさんは「政府が安全性について厳格なルールを設定した上で、我々が業務を再開できる可能性を示してほしい」と話す。

政府はこれまでのところ、企業活動に対する制限は、地域単位ではなく、セクターごとに解除されていくことになるのではないかとしている。

工場閉鎖で計り知れないダメージ

ビチェンツァもパドゥアも、ベネト州にある。ここはロンバルディア州、エミリアロマーニャ州と並び、イタリア国内で最も新型コロナの打撃を受けた地域だ。工場が集中し、中国との経済的なつながりが深いことが、感染が広がった理由として指摘されている。

エミリアロマーニャ州ピアチェンツァの高級ヨットメーカー、アブソリュート社の副社長チェーザレ・マストロヤンニさんは、「当局に対して『急いでくれ』と声を大にして叫んでいる」と話す。「工場閉鎖によって、すでに計り知れないダメージが生じている」と訴える。

だが労働組合は、必要不可欠なものを除いた企業活動の停止を政府が維持しなければ、ストライキに踏み切るとしている。「カネよりも命を守れ」というのが、彼らの主張だ。

多くの企業が工場再開に向けた計画を政府に求めているものの、従業員をリスクにさらすつもりはない。

従業員100人の自動車用エアフィルターメーカーの創業者ガエタノ・ベルガミさんは、多くの受注を抱えつつも従業員が感染するリスクを恐れ、「操業を再開するわけにはいかない」と話す。「再開するのは、管轄当局が可能と判断してからだ」

一方、中道派与党の「イタリア・ビーバ」を率いるマッテオ・レンツィ元首相は、ローマカトリック教会の新聞「ラベニーレ」に対し、「何もかもが片付くまで待ってはいられない。企業閉鎖を続ければ国民は飢えてしまう」と語った。

財界団体のコンフィンドゥストリアは、今年のイタリア経済の成長率をマイナス6%と予想。累積公的債務は国内総生産(GDP)比150%に急増するとみている。何千人もの国民が国の所得支援に申請する中で、詳細な回復の道筋をまとめるようコンテ首相への圧力が高まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 7
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中