最新記事

日本企業

飽くなき挑戦を続けるマツダ 「ロータリー」 はトヨタの次世代EVに採用

2018年4月4日(水)08時00分
森川郁子 ※東洋経済オンラインより転載


社長の執念に応えたロータリー四十七士

開発開始から1年。「もうできません」と、一度開発をあきらめかけていた山本部長(当時)だった。だが、社長である恒次氏の執念を感じた山本氏は、研究部メンバーに対して「寝ても覚めても、ロータリーエンジンのことを考えてください」と告げたという。その使命感をメンバーも感じ取り、研究部はそこから3年で、ロータリーエンジンを完成させた。

newsweek_04.jpg

ロータリーエンジン開発では、「悪魔のつめ跡」という難題が四十七士の前に立ちふさがった(記者撮影)

当時の研究部を知るマツダOB・小早川隆治氏は、「山本さんは、『ネバーギブアップスピリット』を若いメンバーに植え付けてくれた」と話す。開発陣を苦しめた「悪魔のつめ跡」という逸話がある。研究部はエンジンの回転によってできてしまうひっかき傷の解消に苦心していた。

傷を生じさせていたのは、エンジンの作動室の気密性を上げるためにローターの各頂点に取り付けられていたパーツだった。山本氏は「材料から見直そう」と材料だけの研究部門を立ち上げ、昼夜を分かたずさまざまな材料や形状での試行錯誤を繰り返した。これがロータリーの実用化に大きく貢献した。その姿勢はまさに「一隅を照らす」ものだろう。

ロータリースポーツカーが大ヒット

newsweek_05.jpg

マツダが1967年に発売した「コスモスポーツ」。ロータリーエンジンを初めて搭載した量産車だ(編集部撮影)

1967年発売の「コスモスポーツ」に初めて搭載されたロータリーエンジンは、車ファンたちを熱狂させた。日産自動車の志賀俊之取締役も「燃費規制が厳しくなり、車がつまらなくなってきたあの時代に、ロータリーエンジンの走りは衝撃的だった」と称賛する。1978年から1985年まで発売された初代「サバンナRX-7」はグローバルで累計約47万台の大ヒットとなった。

newsweek_06.jpg

1978年発売の初代「サバンナRX-7」も大ヒットした(記者撮影)

スポーツカーとしての実力も伴う。1991年のル・マン24時間レースでは、このエンジンを搭載した「マツダ787B」が総合優勝を果たす。だが、1970年代のオイルショック以降「ガソリンがぶ飲みエンジン」と揶揄された燃費の悪さは、開発陣を最後まで悩ませた。環境規制への対応が困難になり、「RX-8」は2012年に生産終了。以降、ロータリーエンジンを載せた車は販売されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中