最新記事

日本企業

飽くなき挑戦を続けるマツダ 「ロータリー」 はトヨタの次世代EVに採用

2018年4月4日(水)08時00分
森川郁子 ※東洋経済オンラインより転載

しかし、「ロータリーエンジンはマツダの財産だ」と小飼社長が語るように、マツダはチームの規模を縮小しながらも、ロータリーエンジンの開発を続けている。2015年のモーターショーでは、「RX-VISION」という名前でロータリースポーツカーの復活を示唆するようなコンセプトカーが登場した。マツダのある役員は「ロータリースポーツの開発も続けている」と打ち明ける。しかし、現在は次世代エンジンの開発が最終段階を迎えていることもあり、量産化のタイミングが計れない状況だ。

その中で、先述したように、トヨタが開発を進めるEVのレンジエクステンダーに、小型・薄型という利点を生かして、ロータリーエンジンが採用されることが決まった。ロータリーは低回転時の効率が非常に悪く、燃費の悪化につながるが、発電用エンジンなら、車速に関係なく効率がよい回転数の範囲のみで使えばよいため、大きな弱点にはならない。

newsweek_07.jpg

トヨタ自動車が2018年1月に発表した無人運転のEV「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」。このレンジエクステンダーに、マツダのロータリーエンジンが採用された(写真:トヨタ自動車)

トヨタは2020年の東京オリンピック・パラリンピックの大会運営車両としての提供を計画する。ロータリースポーツの復活を望む往年のファンにとってはやきもきするところだが、今もなおロータリーの技術が生き続けていることだけは間違いない。

継承される「ロータリーの父」の開発哲学

「人見は、すばらしい技術者。天才や」。3月5日に行われた山本氏の「お別れの会」で、感慨深そうに語ったのは現相談役の井巻久一元社長だ。人見光夫常務は、高効率エンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)」シリーズを世に送り出した立役者。マツダにとっては、ロータリーエンジンに次ぐ夢のエンジンで、米フォード・モーターからの独立後、マツダの回復を支えている技術だ。

newsweek_08.jpg

3月5日に広島市内で行われた山本健一元社長の「お別れの会」。自動車業界を中心に約1000人が参列した(記者撮影)

人見常務はエンジン開発において、常識では不可能といわれていた「14」という圧縮比を実現。そして、昨年発表した次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」では、圧縮着火技術を世界で初めて量産用で成功させた。平たくいうと、この技術では、ガソリンをディーゼルエンジンのように自己着火させることで、従来よりも少ないガソリン量で同じだけの出力を得られる。ガソリンエンジンの力強い走行を犠牲にすることなく、燃費性能の向上につなげている。

newsweek_09.jpg

ガソリンの自己着火を可能にした新世代エンジン「SKYACTIV-X」。マツダの技術が詰まっている(記者撮影)

「飽くなき挑戦」は今も息づいているか?

newsweek_10.jpg

マツダが2017年の東京モーターショーで発表したハッチバックの「魁(かい)コンセプト」。この車に搭載された次世代技術「SKYACTIV-X」は、2019年から新型車への導入が始まる(撮影:風間仁一郎)

人見常務は山本氏と直接仕事をした経験はないという。だが、「不可能といわれたことをかなえた」という、ロータリーエンジンの開発秘話と通じるところがあるのは単なる偶然だろうか。井巻氏は、「非常識といわれてもやりきる、そういう技術者を育てることが経営の役目。マツダにはそれを認める精神があり、連綿と受け継がれているものだ」と語る。

山本氏はマツダの技術者たちに「飽くなき挑戦」という言葉も残した。言葉そのものが語られることはなくても、マツダには逆境に負けない力を培う土壌がある。前出の小早川氏は「次世代ロータリーはこうありたい、こうあるべきだと模索されているものが出てくると思う」と期待を語る。不可能に挑戦する技術者の不断の努力を、後輩たちが受け継いでいく。その精神こそがマツダの財産だ。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米、ドンバス全域割譲を和平条件

ワールド

FRBの赤字額が昨年大幅縮小、利下げで支払金利負担

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ305ドル高 中東情勢の沈

ワールド

米政権、マスク氏のTSA職員給与支援の申し出拒否=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中