最新記事

金融

「1万円から資産運用」ロボアドバイザーは貯金感覚で広がるか

2017年8月25日(金)18時50分
猪澤顕明(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

toyokeizai170825-2.jpg

お金のデザインはネット金融大手のSBIグループとタッグを組んだ(記者撮影)

テオは最大手ネット証券・銀行とタッグ

サービスの刷新以上に事業へのインパクトを与えそうなのが、SBIグループとの提携だ。SBI証券の預かり資産額は6月末で11.4兆円と、ネット証券で断トツの1位。住信SBI銀行の預金残高も約4兆円(2016年度)と、こちらもネット銀行の中ではトップだ。国内のオンライン金融市場で圧倒的な両社と提携することで、潜在顧客と接触する機会が一層増やせるという算段だ。

実際、預かり資産額で国内のロボアド首位のウェルスナビも、その3分の2がSBIグループ経由となっている。同社は今年初めにSBI証券と住信SBI銀行経由の利用者募集を始めたことで、裾野の広がりに拍車がかかった。

「テオの募集開始以来、ウェルスナビの申し込みは減っていない。ただテオはウェルスナビの2〜3倍の勢いで伸びている」(住信SBI銀行の円山法昭社長)。テオにもウェルスナビと同様、あるいはそれ以上の追い風が吹いているようだ。

2016年以降、野村証券や大和証券といった大手証券会社などの新規参入が目立った国内のロボアド市場。今回お金のデザインが打ち出した新戦略によって、投資金額の引き下げで競争が激しくなりそうだ。

ウェルスナビは当初、少額だと十分な投資パフォーマンスが出せないとして最低開始金額を100万円に設定していた。だがテオに先立つこと1カ月、今年7月に30万円に引き下げている。

投資金額とパフォーマンスは背中合わせの関係だ。ハードルを下げようとして開始金額を下げると、運用パフォーマンスが犠牲になる。あるいは、パフォーマンスを引き上げるために、追加の費用を投じて取引などのシステムを増強する必要がある。事業者に残された選択肢はシステムの増強以外にない。

「ロボアドは総合格闘技だ」。あるロボアド業者首脳はそう語る。投資のアルゴリズムだけでなく、証券取引や税金処理のシステム、送金や決済の体制整備、アプリの開発、セキュリティ、ブランド戦略など、一般的な金融サービスやアプリの開発よりも幅広い分野に力を割く必要があるからだ。

顧客は大事な資産を預けるので、通常のアプリなどに比べてサービス内容を見定める視線が厳しい。「使ってみて、全部の要素が整っていると実感できないと、利用者はお金を入れてくれない」(同)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、FRBの政治介

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中