最新記事

ロシア

ルーブル危機でロシア経済はもう手遅れ

危機回避にはウクライナ問題で譲歩して欧米の制裁を解除してもらうしかない

2014年12月17日(水)18時35分
ジョーダン・ワイスマン

窮地へ 原油安とルーブル危機と経済制裁のトリプルパンチで追い込まれたプーチン Reuters

 ロシアが寒くて長く、経済もガタガタの冬を迎えている。

 欧米の経済制裁と原油安でロシアの通貨ルーブルが暴落を続けるなか、ロシア中央銀行は16日の午前1時、政策金利を10.5%から17%に大幅に引き上げると発表した。ほとんど破れかぶれの決定だ。

 原油輸出に外貨収入を依存するロシアはすでにリセッション(景気後退)に向かって暴走を始めている。そして1998年のデフォルト(債務不履行)以来で最大の金利引き上げは、ロシアにさらなる混迷をもたらすだろう。利上げの狙いは、投資家がロシアから資金を引き揚げるのを食い止めることだった。ロシアの銀行に金を残すのは17%もの利息が受け取れるのだから「うまい話」になるはずだった。

 しかしそうはならなかった。金利引き上げ後も、ルーブルの暴落は続いている。16日は市場明けから一時35%下落し、1ドル=80ルーブルにまで下がった。その後は少し値を戻したが、16日の終値は1ドル=68ルーブルで危機的な状態から脱していない。

 ルーブル暴落が引き起こす問題は、いくつかある。1つには輸入品が高騰し、インフレを起こすことだ。ロシアは食料品を輸入に大きく依存しているので、一般国民にとっては特に大きな問題だ。同時に、ロシアの企業や金融機関がドル建ての債務を返済することが困難になる。ルーブルが下落すれば、その分債務は膨らみ、デフォルトの危険は増す。

 ルーブル暴落を止めようにも、ロシアには利上げ以外の選択肢がない。傷口を止血する応急処置として、外貨準備を活用することはできるが、それもすぐに底をつくだろう。何より、根本的な問題の解決にはならない。

 ルーブルが暴落しているのは、原油価格が下がっているからだ。原油安がロシア経済を苦しめている。石油とガスで税収の半分を賄う政府にとっては悪夢だ。そして輸出品の価値が下がれば、通貨ルーブルの価値も下がる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    バイデンと同じ「戦犯」扱い...トランプの「バラ色の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中