最新記事

欧州債務危機

メルケルがノーと言い続ける3つの理由

ユーロ圏を危機から救うためのユーロ共同債をドイツはなぜ嫌うのか──著名なルービニ教授が米テレビに大胆解説

2012年6月29日(金)16時08分
マシュー・ベーズラー

嫌われ者 メルケル首相の人形に怒りをぶつけるイタリアの労組.  Max Rossi-Reuters

 ユーロ圏諸国が共同で資金を調達する「ユーロ共同債」。緊縮財政と景気悪化の悪循環を止めるために必要とされるが、ドイツのメルケル首相は頑なにこれを拒否してきた。ニューヨーク大学経営大学院教授でエコノミストのヌリール・ルービニが、その理由を米ブルームバーグTVで語った。

 ルービニによれば、メルケルは以下の3点を懸念している。

1)モラルハザード
 メルケルは疑っている。いま破綻寸前にあるギリシャの債務を肩代わりするようなことを引き受ければ、次に危ないイタリアとスペインが債務削減の努力をしなくなる。

2)返済義務
 ユーロ共同債を発行するのは、ドイツのような強い国がギリシャのような弱い国の借金の連帯保証人になるようなもの。もし返済が滞れば、ツケはドイツに回ってくる。

3)信用リスク
 一方では国家債務の返済を保証し、他方では銀行から流出した預金の保証までさせられたのでは、ドイツは大きな信用リスクを負うことになる。ユーロ圏全体で預金準備金を積み立てる仕組みも必要だ。

 ルービニいわく、ドイツは処女でない相手との結婚を求められているようなもの。だから婚約前に、欲望を抑えることもできると証明してもらいたがっているのだという。

 ドイツ人はこう思っているはずだ。「お前はとうの昔にバージンでなくなっているのに、バージンとして生まれ変わったから結婚してくれだと!? 2年ぐらい禁欲してから出直してこい。本気だということが分かれば、2年後には結婚してやってもいい。だが今日結婚の約束をしろだなんて、冗談もほどほどにしろ」

 ドイツは今すぐ結婚式を挙げるほど、ユーロの仲間を信用してはいないのだ。
 
GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中