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ユーロ危機イギリス孤立でEU分裂の危機
EU諸国の財政規律強化を盛り込んだ新基本条約に反対し、孤立する羽目になったイギリスが進む道は
NOの代償 ドイツのメルケル首相(手前)の案に反対を表明したキャメロンだが(12月9日、EU首脳会議にて) Yves Herman-Reuters
欧州債務危機を克服するために先週行われたEU首脳会議は、今後のEUの在り方が大きく変わる可能性を生んだ。事実上、EUが分裂してしまったからだ。
今回の首脳会議では、新たな財政規律強化策が協議された。各国により厳しい財政規律を要求する新基本条約について採択が行われたが、合意したのはEU加盟27カ国のうちユーロ圏全17カ国を含む23カ国だった。
一方で反対を表明したのは、イギリスのデービッド・キャメロン首相。新基本条約の制定によって国家の独立性が失われかねないこと、イギリスの金融部門が弱体化する恐れがあることが反対の理由だ。「私の答えはノーだ」とキャメロンは発言した。「ほかの国々が国家の主権を放棄せざるを得なくても、わが国は決して手放さない」
残りの3カ国、ハンガリー、スウェーデン、チェコは態度を留保した。それぞれ自国の議会と調整を図るとのことだが、最終的には合意するとみられている。そうなれば、イギリスだけが孤立することになる。
つい最近までイギリスの盟友だったフランスは、ヨーロッパ全体の利益よりイギリスの金融部門を守ろうとしているとして、キャメロンを非難した。「デービッド・キャメロンの提案は受け入れ難いものだった。数々の金融規制からイギリスを免除するような特別条項を条約に盛り込め、というのだ」と、フランスのサルコジ大統領は記者会見で語った。
キャメロンがチラつかせる拒否権カード
今回合意された財政規律強化策は、ドイツが描いた青写真にほぼ添う内容だ。ユーロ導入国とその他のEU加盟国のほとんどが、健全財政の遵守を各国の憲法などに明記する、というもの。ルールに違反した場合は、制裁が発動される可能性もある。各国政府は予算を事前に欧州委員会に提出しなければならず、財政赤字が大き過ぎる国は監視や指導を受けることになる。
新規制がどう機能するかは大いに疑問だ。ドイツの構想は、EUの中心的な機関である欧州委員会と欧州司法裁判所に監視役を担わせるというもの。だが、EU全加盟国のために設置されたはずの2つの機関が、今回の規制に合意した国々だけのために動くことが許されるのか――そんな疑問が残る。
キャメロンは、EUの機関がイギリスの国益に反する行動を取った場合は拒否権を発動するだろう、と明言している。そんな事態になれば、イギリスを待ち受けるのはEU脱退という道だ。
「イギリスは孤立した。まったく新たな情勢が生まれ、未知の領域に突入した」と、ブリュッセルのシンクタンク、欧州政策研究センターのピオトル・マチェイ・カチンスキは言う。「新局面を迎えたEUが今後どうなるのか、想像もできない」