最新記事

欧州経済

イタリアに飛び火した債務危機

ベルルスコーニが首相辞任を決めてもイタリア国債は急落。世界第7位の経済大国ももはや救えないのか

2011年11月10日(木)15時52分
サマンサ・スタインバーン

手遅れ ベルルスコーニが過去の人になっても危機は居座る気配 Charles Platiau-Reuters

 イタリアの債務危機がヨーロッパ全体に波及する懸念が拡大したことを受けて9日、アメリカの株価指数はいずれも3%以上下落した。ダウ工業株30種平均の終値は、前日終値より3.2%安い1万1780.94ドルだった。S&P500指数は前日より3.67%、ナスダック総合指数も3.88%下がった。

 8日には、イタリア政府が財政緊縮策を受け入れた時点でベルルスコーニ首相が辞任するというニュースが流れ、株価が上昇したばかり。しかし翌日にはこの有り様だ。

 清算機構のLCHクリアネットは、イタリア国債を取り引きする際の担保レベルを引き上げた。これによってイタリア国債の2年物、10年物の金利は年7%を上回った。99年にユーロが設立されて以来、最高の金利だ。

ギリシャよりはるかに大規模な支援に

 ロイター通信によれば、国債の金利が7%を超えると政府の財政運営は極めて難しくなる。そうなるとイタリアが資金支援を受けることになり、ユーロ圏がさらなる不況に陥る可能性も高まる。国際機関によるイタリアへの支援は、ギリシャやアイルランド、ポルトガルよりはるかに大規模になるとみられている。

「ユーロ圏の債務危機は新たな局面に入った」と、ブリュッセルを拠点とするシンクタンク「ブリューゲル」の上級フェロー、ニコラ・ベロンは米ニューヨーク・タイムズ紙に語った。「これから先は未知の領域だ」

 ドイツのメルケル首相率いる政権与党がユーロ加盟国の離脱を認める提案を検討していると地元紙で報じられたことも、市場に動揺を与えている。

「まるで終わりのないホラー映画だ」と、米金融機関フィフス・サード・アセットマネジメントのキース・ワーツは言う。「最大の問題は、ヨーロッパのほとんどの経済圏がそれぞれの『大きな政府』を支えきれないこと。この頭の痛い問題は、今後もずっとつきまとうことになるだろう」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中