コラム

絶滅危機の動物が生ぬるい温暖化対策に抗議!(パックン)

2019年06月06日(木)17時10分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Save Us Please! / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<民主党が温暖化対策の「中道」と「極端」でもめているなかで、トランプは逆に石油採掘や石炭火力発電を推進している>

⚡☠@!はなんと読むか分かる? 漫画などでよく見るものだが、実はお下劣すぎてアメリカの上品な紙媒体では文字に起こせない言葉だ(#&%などを使うこともある)。幸いに、日本の紙媒体なら問題ないはず。正解は大体shitかfuckかだ。どちらかは文脈で推測できる。「Holy ⚡☠@!」や「In deep ⚡☠@!」など、名詞として使うときはshit。「⚡☠@! off」や「⚡☠@!up」のように動詞として使う場合はfuck。ぜひ覚えて、自らは一切使わないでください。

ここでは3人が「Fuck your "middle ground" approach(折衷案なんて死んでしまえ!)」と、climate change(気候変動)への中途半端な政策に激怒を表明している。しかし、彼らの前を忙しそうに通りすぎる男は Those crazy tree-hugging liberals get weirder looking every day!(環境保護主義のおかしなリベラルたちが日に日に奇妙な外見になっていく!)と片付けてしまう。

でも、3人はリベラルではなく、絶滅に瀕している動物たち。話題の国連の報告によると、彼らウミガメ、ホッキョクグマ、サイも含めて絶滅の危機にある動植物はなんと100万種に上る。全地球に800万種ぐらいしかいないのに、その12%を超えるものが人間のせいで姿を消そうとしている。チーターもトラもゴリラもキリンもイルカも。不思議なことに、数が減らないのは公害になるもの。カラス、ゴキブリ、政治家......。

すみません。アメリカのユーモアを支える政治家バッシングをついやってしまうが、もちろん頑張っている政治家もいる。来年の選挙に備えて、米民主党の有力大統領候補のほとんどは「グリーン・ニューディール」という大胆なエネルギー改革を公約している。しかしこれは極端すぎて非現実的と考えるトップ候補のジョー・バイデン前副大統領は、保守派の国民にも支持され、立法できるような妥協策を目指している。パリ協定離脱を撤回したり、CO2(二酸化炭素)排出量が石炭より少ない天然ガスの発電を推進するという。

確かに政治的に現実味のある計画だが、「地球にとっては物足りない!」と、動物だけではなく多くのリベラルが怒っている。(せっかくだから名前にちなんで、彼は日本みたいに個人が太陽光や風力で発電した電気を簡単に売れる制度を全米に広めればいいと思う。ジョー売電!)

しかし、民主党が温暖化対策の「中道」と「極端」とでもめているなか、トランプ政権は燃費規制を緩めたり、石油採掘や石炭火力発電を推進したりして、逆に温暖化を進めようとしている。しかも世論調査によれば、トランプはどの民主党候補にも次の選挙で勝ちそうだ。⚡☠@!!

<本誌2019年6月11日号掲載>

20190611issue_cover200.jpg
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story