コラム

災害時「タワマンは陸の孤島」とされても、とどまらざるを得ない日が来る

2022年09月13日(火)13時16分

上層階で急病人が出たときなどのケースを想定し、4時間分の非常用電源があっても温存された。つまり、非常用電源を持っていてもエレベーターを止めざるを得なかったのだ。結果として、「陸の孤島」状態は確かに起きた。

それでは困ると、東日本大震災の後、大量の燃料を備蓄することなどで、エレベーターの稼働時間を延ばすことが行われた。エレベーター1基を48時間動かせる非常用電源を備えたり、72時間稼働、1週間稼働というケースも出てきた。

最新の超高層マンションでは、地震に強いガス管を引き入れることで非常用電源が働き続ける。つまり、エレベーター1基を制限なく動かし続けることができる、という工夫も生まれている。

といっても、それは一部の最新マンションの話。多くは、停電でもエレベーターを1日から3日程度動かすことができるようになっているのだが、いまだに「4時間程度しか動かせない」という事例もある。

そのため、「停電でエレベーターが停止し、機能不全に陥る」ケースはないとはいえない。が、すべての超高層マンションが停電で機能不全に陥るわけではないのだ。

安全な超高層マンションは、避難場所として指定される

超高層マンションは、地震に対して脆弱というイメージがある。しかし、実際には地震に対して強いといえる側面もある。

まず、建設するための工法基準が一般のマンションよりも厳しい。基準が厳しくなるのは、高さ60メートル(だいたい20階建て)以上の建物において。それが、20階建て以上のマンションを「超高層」と呼ぶ理由となっている。

ちなみにタワマンと呼ばれるタワーマンションには基準がなく、塔状であれば、18階建てでも15階建てでもタワマンと呼ばれている。

話を戻そう。

地上20階建て以上の超高層マンションは信頼度の高い工法で建設され、理論上、大地震でも重大な損壊が生じることはない。加えて、隣接する建物との間隔が広くとられるので、まわりで火災が発生しても延焼の危険性が少ない。建物内にスプリンクラーを設置し、非常用電源のほかに災害備蓄品が充実するのも、超高層マンションの特徴だ。

液状化が起きたとしても、杭打ちがしっかりしているので、建物は傾かない。それは阪神淡路大震災の際、神戸の埋め立て地で証明された。

そのような強さを持つため、避難所に指定されることがあるわけだ。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

対日関税で米大統領令、自動車2週間以内に15%に 

ビジネス

午後3時のドルは148円前半へ下落、米雇用統計待ち

ビジネス

対日関税で米大統領令、自動車2週間以内に15%に 

ワールド

タイのタクシン元首相、ドバイに到着と投稿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 7
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 8
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 10
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story