コラム

災害時「タワマンは陸の孤島」とされても、とどまらざるを得ない日が来る

2022年09月13日(火)13時16分

阪神淡路大震災のとき、分譲の超高層マンションは大きな損壊が生じることがなかった。

それに対して、建物倒壊や火災の影響を大きく受けたのが、木造一戸建てや木造のアパート。その住人で避難所が満杯になったため、建物が無事なマンション住人は自宅にとどまることが求められた。

これは、多くの災害で生じる現象だ。人口の多い首都圏では、「避難所に入れない」という問題が深刻になるはずで、マンション住民は、自宅にとどまることが当然になるだろう。

そもそも1棟で500世帯を超える人が住むこともある超高層マンションで、住人が一斉に避難所に押し寄せたら、それだけでパニックが起きてしまう。マンション内にとどまってもらったほうがよいわけだ。

マンション住人は、避難所に入るのではなく、自宅内にとどまる。その事態が想定されるため、超高層マンションでは停電になっても暮らし続けることができるよう非常用電源を充実させている。

加えて、水・食料を含めた備蓄品を備え、災害時でも使用できるマンホールトイレや泥水からでも飲料水をつくる生成装置なども自前で用意している。

さらに、阪神淡路大震災と東日本大震災の際、不動産会社系列の管理会社は、自発的に輸送部隊を結成し、水や食料、医薬品などを被災地のマンションに届けた。

災害時の支援物資が避難所優先で配られ、マンションにはなかなか届かないことがわかっていたからだ。

超高層マンションの「強さ」

戸数規模が大きい超高層マンションでは災害に対応する準備が十分に行われている。これは、超高層に限らず、中層・高層の大規模マンションでも同様だ。さらに、超高層マンションでは免震構造や制震構造を採用することで、地震の被害を軽減させる工夫も多い。

そのように地震に対する備えが多いマンションでは、1階ホールなどが緊急時の避難所として指定されることがある。

sakurai20220908113302.jpg
超高層マンションの1階部分には住戸がなく、ロビーなど共用施設として利用される。そのロビーなどが、災害時に避難所として開放されることがある。参考例として、筆者撮影

万一のときは、他の住人や帰宅困難者を迎え入れることができるように指定され、行政が準備した食料品などを備蓄しているわけだ。

超高層マンションは、そのような「強さ」も備えている。

マンション内の避難所は、災害時に頼りになる。が、どのマンションに避難所があるかは、残念ながらわかりにくい。

帰宅難民などが立ち寄りやすいよう、災害時の適切な誘導策などが求められるところである。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story