コラム

ニューヨークの地下鉄の匂いを掴み取る情熱の写真家

2016年12月23日(金)11時35分

Subway. New York City. @chivexp @thomashoepker @brix123 I recently received my Super 8mm Kodak Tri-X 7266 Reversal Film test back from the lab. It's not too bad considering I was using an old camera handheld as I stood on the station platform really close to a speeding train to capture this. Keep in mind that this is a single frame of a moving image. I love it, the high contrast and grain is what I hoped for. It's a silent film stock and I processed it as a negative. I'll mix film, both positive and negative as well as digital along with some personal methods of capture that are my own for this project. GHOSTS IN THE MACHINE. My experimental short film set in the New York City subway system. I'm experimenting with various techniques to achieve the overall look for my film. Sound will play an important role in this film, equally if not more important than the visuals in some scenes. Accurately recorded sound doesn't really interest me for this project and won't have much of a presence, the real sounds of the location environments will be distorted so they no longer correspond with the image, along with some scenes in complete silence. Some scenes the visuals will be the most important, other scenes will be driven by the sound or lack of it.

☘Slainte!☘さん(@stephen.reel)が投稿した写真 -

 2つの地下鉄プロジェクトには共通している匂いがある。ヴィジュアル用語でいうダーク、あるいはノワールなのだ。暗い匂いが漂っているのである。リール自身もそれを認め、また意図的に「ざらざら」した感じを捉えようとしていると言う。彼がニューヨークの地下鉄にそう感じる理由をさらに問うと、こう返ってきた。

 ニューヨークは人で溢れかえっている。なのに、インフラは非常に古い。そんな状況の中で地下鉄にいれば、人々は不安や緊張、あるいは閉所恐怖症的な感覚を無意識に発してしまうもの。そうした深層的感情をつかみとるようにしているんだ、と。

 実のところ、そうしたどこかダークで緊張を孕む匂いは、彼の大半の作品に存在している。もう1つ別のプロジェクトである、ネガフィルムを実験的にプリントしたポートレイト・シリーズもそうだ。彼が25年以上かけて作りあげたダークルーム(暗室)テクニックを用いながら、1枚につき何時間もかけてプリントしたものだ。

 写真史におけるプリント・マスターであるマン・レイとアーヴィング・ペンに敬意を表している、と彼は言うが、そこにはリールの感性と彼自身がニューヨークで一体化してきた彼そのものの匂いが根付いている。だからこそ、作品はより魅力的になり、ダークであったとしても情熱を放っているのである。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Stephen Reel @stephen.reel

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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