金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因とは...金相場はまだ上がる? それとも下がる?
Gold Price Hits Record High—What It Says About US Economy

金の価格上昇はトランプ政権によるものなのか Shutterstock AI-shutterstock
<金は政治や経済が不安定な時の「安全資産」として、昔から投資家から愛されてきたが>
金の価格はかつてない急騰を見せており、過去の価格記録を塗り替えた。経済的、政治的な不安が入り混じるなか、投資家や各国政府の間で、古くから「安全資産」とされてきた金への信頼が再び高まっている。
今年2025年は特に堅調で、金はこれまでに約35%上昇し、株式指数や主要な暗号通貨を上回るパフォーマンスを見せた。金価格は9月2日、史上初めて1トロイオンス(貴金属の計量に使用される単位。約31グラム)あたり3500ドルを突破した。
金は歴史的に、経済が不安定な時期に資産の逃避先とされてきた。インフレ、法定通貨の信頼性リスク、政治的混乱といった状況下で、投資家たちは金に資金を移す傾向がある。
本誌の取材に応じた専門家たちは、金価格の上昇にはさまざまな要因があるとしながらも、アメリカ経済を巡る「不確実性」と「慎重姿勢」が中心的な要因だと述べた。
スタンダードチャータードの貴金属アナリスト、スキ・クーパーは「地政学的、経済的、貿易面での不確実性が高まる中で、価格を動かす要因が変化し、それが金の上昇を後押ししている」と語る。
「アメリカ国内のみならず、世界的にも投資家の関心が高まっている」
貴金属取引プラットフォーム、ブリオンボールトの調査責任者、エイドリアン・アッシュは、経済に長期的に悪影響を与える構造的要因に加え、「目下のニュース」が投資心理に影響を与えていると指摘した。
「たとえば、4月に株式市場が解放の日(トランプが世界中の国への相互関税を発表した4月2日を指す)を受けて急落した時のような、具体的な事件とは異なる。今回の金価格上昇は、明確な要因があるわけではない」
アッシュによると、トランプの貿易・外交政策が「過去30〜40年に築かれた世界秩序を大きく揺るがしている」ことも、危機を察知している投資家の背中を押しているという。
そして、金価格の上昇は、米財務省の試算によると37兆ドルを超えるアメリカ政府の財政赤字の持続可能性に対する懸念にも関係していると述べた。