コラム

「何を撮るかでさえ重要ではない」と、豪州の強烈な陽光の下で

2016年10月26日(水)16時25分

Stairwell. Sydney. Australia

Markus Andersenさん(@markusxandersen)が投稿した写真 -

 また、主題となる人物の描写は、群れから離れた人、とりわけビーチでのシーンが多いが、単純にハッピーに見えるだけのものは存在しない。ある種、抑圧的な匂いさえ付随している。そうしたことも、すべてシドニーというメガ・シティーが必然的に孕み、生み出している人間社会の現実から来ている、とアンダーセンは言う。

【参考記事】ビーチ・ライフがアイデンティティ形成に果たす役割

 アンダーセンの写真の多くは、彼のインスタグラムや、最近出版した写真集『Rage Against the Light』(2013年から2015年にかけて撮影したシドニーの作品) に見られるように白黒写真だ。ライカを使ってフィルムで撮ったもの、フジのデジタルカメラで撮ったもの、あるいはiPhoneで撮影したものという具合に、意図的にいろいろな撮影フォーマットやメディアを使っているが、コンセプトは一貫している。とりわけ写真集は、すべての写真が同じフォーマットで撮影したと思えるほどだが、それもコンセプトがあるためだ。

 カメラは単なる道具に過ぎず、大切なのは己の眼である、と訴えるためである。何を撮るかでさえ重要ではなく、最も大切なのは自分の世界をいかにフレームして切り取るかということ。ちなみに、12月には、オーストラリアでもっとも人種が入り混じり多様性に富んだ街の1つであるカブラマタを、強烈な陽光に焦点を当てながらドキュメントしたカラーの写真集『Cabramatta: a moment in time』も出版される予定だ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Markus Andersen @markusxandersen

Northern Beaches. Sydney. Australia.

Markus Andersenさん(@markusxandersen)が投稿した写真 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお

ワールド

日米2回目の関税交渉、赤沢氏「突っ込んだ議論」 次

ワールド

原油先物が上昇、米中貿易戦争の緩和期待で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時500円高 米株高や円安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story