コラム

なぜイランには自分自身を撮る写真家が多いのか

2016年09月13日(火)11時27分

From Negar Takbiri @negartakbiri

<なぜかセルフポートレイトを撮る写真家が多い国、イラン。テヘラン在住のネガール・タクビーリもそのひとりだが、自らをフレームに収める理由は、ナルシシズムやセルフ・コンプレックスを超えた、もっと哲学的なものだった>

 セルフポートレイトは、古今東西、数多くのヴィジュアルアーティストが好んでモチーフに取り入れてきた作品形態のひとつだ。写真家も、新進とベテランとを問わず、多くの者が自らをフレームに収めてきた。今回紹介するテヘラン在住のイラン人、ネガール・タクビーリもそのひとりだ。

 タクビーリのセルフポートレイト・シリーズの大半は、ストレートに撮られたものでなく、壊れた鏡やガラスに映り込んだ彼女自身だ。シリーズは2年前、偶然壊れた鏡と共に始まったという。それが周りの風景やペットなどとも絡みあってさまざまな彼女自身を映し出し、不可思議な魅力を与えてくれる。

 今回、彼女を選んだ理由のひとつは、イランにはなぜかセルフポートレイトを撮る写真家が多いからだ。彼女を通してその謎が解けるかもしれない、と思ったのである。美男美女が多い国のため、ナルシシズムを作りだしているのかもしれない。あるいは、その反対に、ちょっとしたセルフ・コンプレックスから、自分を直視するため、セルフポートレイトを多用する写真家が多いのかもしれない。

【参考記事】24歳イラン人写真家のストールン・モーメント
【参考記事】シャガールのように、iPhoneでイランを撮る

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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