コラム

アメリカで「転売ヤー」問題が少ない理由

2022年06月22日(水)15時00分

ただ、これはコロナ禍に半導体不足が重なる中で、新車の供給が遅滞しているためで、一時的な現象と言えます。少なくとも、日本のようにプラモデルや健康飲料などの「商品」がプレミア価格になるということはありません。人気化するようなら、生産を増やすことで供給が確保されるからです。

では日本の場合は、どうして転売ヤーが登場することで商品が品薄になったりするのかというと、メーカーの側で生産を増やすのが簡単ではないからです。それは日本の市場が中長期の観点からは、人口減により縮小することが明らかだからです。商品がヒットしたからといって、簡単に生産ラインを増やすことができないのは、そのためです。

転売による価格吊り上げのターゲットになる、電子機器やプラモなどの商品は、対象が比較的高齢層だということもあります。いくら購買力のある層を市場にしていても、その層がより高齢化する中で、その商品が下の世代にはアピールできない性質のものであれば、今後を考えると、無理に供給力を拡大することはできません。

つまり、日本の場合は人口の縮小と経済の衰退が起き、また同時に格差の拡大が起きていることが、転売ヤーの「つけ込む」余地になっているのだと思われます。かつてアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領は、行き過ぎた自由競争がかえって自由経済を傷つけることを認識して、独占の禁止を含む公正取引という概念を導入しました。それとは別の意味で、日本における格差の拡大と市場の縮小が、自由な価格形成を阻害している現状については、経済学の立場からしっかりと検証が必要だと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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