コラム

トランプ献金呼び掛け「1000%キャンペーン」のまやかし

2020年12月03日(木)17時00分

トランプ陣営の献金呼び掛けには変化球的なアプローチが目立つ Yuri Gripas-REUTERS

<「100ドル献金すると1100ドルになる」? トランプ陣営が訴訟費用捻出のために行った奇妙なキャンペーン>

アメリカの選挙戦では、SNSやメールが主要なツールとして活用されています。その場合に、支持者を広げて票を増やす活動に加えて、個人献金への誘導も徹底して行われました。支持者と思われる人には、募金を募る「マーケティング」としてメッセージやメールが送られてくるのです。

そうした献金誘導のツールを見ていますと、今回のバイデン陣営とトランプ陣営のアプローチには大きな違いがあったことに気付かされます。

まずバイデン陣営のアプローチは、非常にシンプルでした。メールの場合、とにかく政治的なメッセージが延々と書かれています。ある政策については絶対に死守しなくてはならない、だから今度の選挙は勝たねばならない、ある州ではもう一歩で安全圏に行くのでそのためには資金の追加投入が必須、そこで10日以内に目標額を達成するため、今すぐ献金をお願いしたい......というのがパターンです。

とにかく直球作戦と言いますか、正直と言いますか、要するに民主党支持の有権者というのは、そうしたストレートなメッセージを出せば、しっかり反応するということが分かります。

一方でトランプ陣営の方は、直球というより変化球的な「マーケティング」が目立っていました。例えば、「あなたはあと1回のグッズ購入で『ゴールド会員』」になるから帽子を買えとか、その数週間後には何も買っていないし献金もしていなくても、「おめでとう、あなたは『ゴールド会員』」と言ってきて「グッズ購入で帽子がタダ」というオファーが来たりという具合です。

こうした手法については、民主党とはずいぶん違うとは言え、物販の「ノリ」でマーケティングをしているという受け止めができます。また、タダでモノを配る作戦については「おそらくグッズがそんなに売れていなかった」という想像をめぐらせば理解は可能です。

一方で、選挙戦の終盤から、選挙後の訴訟資金の献金誘導の段階になって、奇妙なメッセージを何度か目にしました。それは、トランプ陣営から(その時は、次男の妻で選対メンバーのララ・トランプ名義)のもので、今なら「1000%キャンペーン」をやっているので急いで献金をという内容でした(記事末キャンペーン画像参照)。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、和平巡る進展に期待 28日にトラン

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story