- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 脱ダム政策への賛否が問題ではない 球磨川治水議論へ…
脱ダム政策への賛否が問題ではない 球磨川治水議論への3つの疑問

人吉では球磨川は水資源でもあり、観光資源でもある Kim Kyung Hoon-REUTERS
<2000年代の「脱ダム」議論はコストだけが問題視されたのではない>
今回の熊本・人吉の水害に関しては胸の潰れる思いがしました。以前、親の実家が人吉という知人に聞かされたことがあるのですが、この地域の人々は「日本三大急流」の1つとして球磨川を誇りにしています。川下りなどの観光資源、透明度の高い水質の清流、鮎などの水産資源などを大切にしつつ、とにかく川とともに生きるというのが、この地方のライフスタイルであり、その川が「暴れてしまった」中での悲劇には言葉もありません。
流域で50人以上の死者を出したなかで、あらためて治水問題が真剣に議論され始めたのは当然と思います。ですが、脱ダム政策への賛否を中心とした現在の議論の延長に解決策があると思えません。少なくとも3つの疑問が残るからです。
疑問の第1は治水政策に対して述べた、蒲島知事の反省の弁です。今回の被害を受けて、知事は「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。非常に悔やまれる」と述べています。正直な発言と思いますが、この発言は簡単に受け止めることはできません。
何故ならば、2000年代に議論された「脱ダム」という一種の政治運動は、全国的な「ハコモノ行政」見直しの機運の中で起きたものであり、少なくとも中長期の財政規律への危機感などに支えられていたからです。それにもかかわらず、この球磨川に関しては、ダム建設が高価だから反対論が優勢となって知事も断念したのではなく、むしろ「脱ダム」の方が高価だというのは意外感があります。少なくとも、民主党(当時)などが主張していた「脱ダム」政策との整合性はあらためて問われるべきでしょう。
球磨川は「資源」
疑問の第2は、仮に極めて高価であっても「脱ダム」を選択したというのは、何故かという点です。それは地域エゴとか利権誘導ではないと思います。冒頭に述べたように流域の人々が、球磨川の流れに特別な思いを抱いていたこと、例えば鮎という水産資源を大切にしていたことなどが背景にあり、それが「高価であってもダムではない方策で治水を」という判断になったのだと思います。
今回の被災で急速に「川辺川ダム建設構想」が浮上しているのは事実です。ですが、流域住民の意思として「清流への愛着」があり、それが一旦はダム以外の対策を選択することとなった事実は重いと思います。そこを無視して、被災したのだからダム派が巻き返せば政治的勢いにできるというのは、短絡的に感じます。
<関連記事:日本の災害で、早めの避難指示を妨げるもの>
日本の次期首相に絶対的に必要なのは「円を守り抜く信念」 2025.10.15
いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う時代 2025.10.08
AI就職氷河期が米Z世代を直撃している 2025.10.01
クールジャパン戦略は破綻したのか 2025.09.24
日本の新政権が向き合うべき、安全保障の「ねじれ」というアキレス腱 2025.09.17
「物価高対策と財政規律の間の最適解」──ポスト石破に求められる最重要課題 2025.09.10
アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える 2025.09.03
-
人事マネージャー候補/外資系大手オンラインメディア企業
株式会社クリーク・アンド・リバー社
- 東京都
- 年収750万円~950万円
- 正社員
-
プロダクトエンジニア「ポテンシャル採用/大手や外資系など3000社に導入/HR SaaS「ミキワメ」/港区/web系SE・PG/東京都
株式会社リーディングマーク
- 東京都
- 年収400万円~550万円
- 正社員
-
未経験OK 外資系有名ブランド企業社内ヘルプデスク業務 京橋駅
株式会社スタッフサービス ITソリューション
- 東京都
- 月給23万5,000円~
- 正社員
-
生成AI商材/大手外資系「インサイドセールス「SV候補」」/その他コンサルティング系
ブリッジインターナショナル株式会社
- 東京都
- 年収340万円~450万円
- 正社員