コラム

脱ダム政策への賛否が問題ではない 球磨川治水議論への3つの疑問

2020年07月14日(火)16時00分

3番目の疑問は、仮に今回の被災を受けて、やはり「川辺川ダム」の建設に踏み切ったとして、ダムさえ作れば安心かというと決してそうではないということです。例えば2018年の西日本豪雨の際、愛媛県西予市などを流れる肱川(ひじかわ)では、流域に降った雨量が想定を上回るなかでダムの緊急放水が行われたのですが、その際の情報伝達の問題から逃げ遅れた住民8人が犠牲になるという悲劇が起きています。

この肱川では、被災後に国と地元が必死になって改善策を協議し、その一方で犠牲の重さに対しては訴訟により責任問題の決着を図る動きも出ています。とにかく、ダムさえ作れば安全ではなく、ダムによる治水を行った場合には、緊急時には放水を判断し、それを事前に下流に的確に伝えるなど「ダムの使い方のソフト」、つまりコミュニケーションの体制を維持していかなければなりません。

この球磨川の問題は「脱ダム」か「ダム建設」といった単純な選択肢の問題におさまる問題ではないと思います。悲劇を受けて、活発な議論がされるのは良いことだと思いますが、ここはやはり現場の復興を進めるなかで、現地と県と国が選択肢を整理しながら合意形成していくことが必要だと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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