コラム

アイオワ州予備選、集計トラブルの末の勝者は誰だ?

2020年02月05日(水)16時45分

途中経過で首位になったのは若手中道派のブティジェッジ Jonathan Ernst-REUTERS

<民主党予備選のスタートとなるアイオワ州で集計トラブルが発生、この失態で「勝者はトランプ」とまで論評される始末>

今週3日、現職のトランプ大統領へのチャレンジャーを決める民主党の予備選レースがスタートしました。伝統にならって、その初回はアイオワ州党員集会となっています。1992年にビル・クリントンが、2008年にバラク・オバマが、このアイオワでの勝利を足がかりに旋風を起こしたように、2020年も新たなストーリーが期待されていました。

ところが、今回は思わぬ展開となりました。通常、党員集会が終わるとその日のうちに大勢が判明するのですが、今回はいつまでも結果の発表がありませんでした。深夜になって、各候補はまるで自分が勝ったかのような演説をすると、次の予備選が戦われるニューハンプシャーへ移動していったのです。

党員集会の結果は、アイオワ州全体で約1700あるという会場から、今回は新たに開発されたアプリに入力することで集計される計画でした。ですが、そのアプリに不具合があって使えない事態が発生しました。さらに電話報告に切り替えたところ回線が足りなくなるなどのトラブルが重なり、得票数と獲得代議員数の数字に整合性が取れなくなり、数字の公表ができなくなったというのです。

翌日4日になって、ようやく夕方5時に数字が出ることになりましたが、途中で「出ても半分」だという情報が流れ、それが「かなりの数字は出せる」に変わり、そして夕方5時になって発表された時には「開票率は62%」となっていました。本稿は、この数字を前提に書いています。

この62%開票という時点での順位は以下の通りです。混乱を避けるために獲得代議員数ベースで並べますと、

<1位>ピート・ブティジェッジ候補......26.9%
<2位>バーニー・サンダース候補......25.1%
<3位>エリザベス・ウォーレン候補......18.3%
<4位>ジョー・バイデン候補......15.6%
<5位>エイミー・クロブチャー候補......12.6%

というのが暫定的な順位です。ちなみに、ニューヨーク・タイムズが報じた独自の調査によれば、バイデン候補は5位という説もあります。

この状況を横目で見て、大統領自身も含めて多くの人が囁いているのは、民主党は党員集会の開票もできないことを見せつけてしまい、結局この党員集会での勝者はトランプだという言い方です。残念ながら、そのような評価は否定できません。一時期話題になっていたトランプ大統領に対する弾劾裁判は、上院に進んだものの、新たに証人を喚問する決議が否決され、弾劾訴追の審理そのものが終了しようとしていますから、この「党員集会開票失敗事件」と合わせて、大統領への追い風となっているのは事実です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府、新大型原子炉建設に向け3社と800億ドル規

ワールド

イスラエル軍、ガザを空爆 ネタニヤフ氏「強力な」攻

ワールド

原油先物2%安、ロシア制裁の影響見極め OPECプ

ビジネス

米国株式市場=連日最高値、エヌビディア急伸 ハイテ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 9
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story