コラム

アイオワ州予備選、集計トラブルの末の勝者は誰だ?

2020年02月05日(水)16時45分

実は、隠された勝者はもう1人いると思います。それはほぼ無尽蔵というべき資金力を持ちながら、序盤戦を回避するという奇策に出たマイケル・ブルームバーグ候補です。アイオワの結果集計がもたつく中で、2月2日のスーパーボウルに「銃規制推進」のメッセージを含めたテレビCMを流して影響力を浸透させたブルームバーグは、3月3日の「スーパー・チューズデー」で一気に1位に躍り出る戦略と言われていますが、それが全くのファンタジーではなくなってきたのは事実だからです。

それはともかく、今回の結果(開票率62%の暫定結果)については、次のような指摘ができると思います。

まず、ブティジェッジ候補に勢いがついたのは事実です。ですが、彼がビル・クリントンやオバマのように全国規模での旋風を起こすかどうかは、まだ分かりません。ニューハンプシャーは地の利のあるサンダース候補の圧勝が見込まれ、仮にブティジェッジ候補が苦手としているサウスカロライナとネバダで善戦すれば、有力候補ということになりますが、現時点ではまだ先行き不透明です。ただ、中道派の中では、バイデン、クロブチャーを抑えて一歩抜け出したのは事実です。

党内中道派がやや優勢か

一方で、サンダース候補については4年前の2016年に同じアイオワでヒラリー・クリントンを1%差まで追い詰めたことが、「ヒラリー対サンダース」の熾烈な予備選の幕開けであったし、現在に続くサンダース派の結束の原点でもあります。そのアイオワで再び善戦し、続くニューハンプシャーでの勝利も見込まれることで、これで勢いに乗ることになると思います。

さらに、中道派と左派という政策グループの力関係で見てみると、ブティジェッジ候補を含む「中道派」は、バイデン候補の18.3%、クロブチャー候補の12.6%を足すと合計で55.2%と過半数を超えます。ここに、ブルームバーグ候補の「選挙資金」が合体すると強力になるのですが、この数字はあくまでアイオワの、しかも62%時点の数字であって、実際に中道派にそこまでの勢いがあるかは分かりません。

反対に、左派はサンダース候補とウォーレン候補を足して45.2%ですが、その結束力は強いですし、2016年にヒラリー・クリントンの「中道主義」を大企業や軍との癒着だとして嫌った世代は、同じように大富豪のブルームバーグには強い反発を向けています。またバイデン候補も、オバマ政権にコミットして雇用を奪った存在として敵視しています。

そう考えると、今回のアイオワの結果(暫定)というのは、党内の中道派と左派による激しい抗争の幕開けとも言えます。仮にそうであれば、やはり得をするのはドナルド・トランプということになりかねません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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