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アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベトナム展開加速

2025年12月13日(土)08時25分

中国企業が、ベトナムに投資を進め、事業を拡大させている。写真は4月、ベトナム北部のハイフォン港で撮影(2025年 ロイター/Athit Perawongmetha)

Francesco Guarascio

[ハノイ 10日 ロイター] - 中国企業が、ベトナムに投資を進め、事業を拡大させている。同じ社会主義国で国境を接している両国は、領有権問題などを抱え複雑な関係だったが、トランプ米大統領による輸入関税引き上げという逆風が双方を急接近させている。

中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)はベトナムで5G(第5世代移動通信システム)設備の供給契約を相次いで獲得。ベトナム当局は高速鉄道建設のための中国から融資を受けることを承認し、ベトナムの航空会社が中国国有航空機メーカー、中国商用飛機(COMAC)の中国製小型機を運航することを認可した。

アジア太平洋安全保障研究センターのアレクサンダー・ブビング氏は、ベトナムが中国に急接近する背景には、外交関係のバランスを取るという長年の方針がある可能性を指摘。一方で、この傾向が続けばベトナムは西側諸国との関係でリスクが生じ、「揺れる国」というより「分裂した国」になる可能性があるとの見解を示した。

米国が1990年代にベトナムへの禁輸措置を解除した後、ベトナムは米国系の多国籍企業や技術に門戸を開いた。一方で1979年の中越戦争や、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の領有権争いなどを背景に、中国に対しては慎重な姿勢を保ってきた。

ただトランプ氏による関税引き上げで米国との関係が悪化した間隙を突くように、中国の影響力が高まっている。

<技術移転に踏み込む>

ロイターのデータ分析と業界関係者への取材で、中国企業はこれまでは慎重だった技術の移転を約束し、ベトナムを単なる組立工場ではなく消費市場として捉える傾向が強まっていることが明らかになった。

シンガポールのシンクタンク「ISEAS─ユソフ・イシャク研究所」の研究員、ファン・スアン・ドゥン氏は、このような変化はトランプ氏が課した20%の関税によって加速したと指摘。「ベトナム当局は米国の措置を懲罰的と受け止めて不快感を持ち、経済面で中国への依存度を高めることでリスクヘッジを図った」と分析する。

ベトナム外務省とホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

中国外務省は、経済協力は両国に利益をもたらすとの声明を出した。

<薄れる反中感情>

トランプ政権の中国「デカップリング(切り離し)」圧力にもかかわらず、ベトナムの中国からの輸入は増えている。ベトナムの統計によると、2025年1―11月の中国からの輸入額は約1680億ドルと前年同期比で30%弱増えた。年間で過去最高だった24年通年の輸入額を既に大きく上回っている。

輸入額のうち3分の1弱は電子部品で、これらの米国向け製品に組み込まれて再輸出される場合が多い。野菜や自動車などの消費者関連商品の輸入も増加している。

若年層の反中感情が薄れつつあることが輸入急増を後押ししている。トランプ関税を受け新規市場開拓を進める中国の戦略のもと、中国企業がベトナム国内で競争を激化させている。

ロイターが入手した非公開データによると、中国の電動二輪車メーカーのヤディア・グループ・ホールディングス(雅迪集団)は25年1―10月にベトナムで3万6000台超を販売。最大手のビンファストには遠く及ばないものの、メーカー別で4位となった。一方、内燃機関の二輪車大手のホンダとヤマハ発動機は、ベトナムがガソリン車の段階的廃止を進める中でシェアを落としている。

中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)もベトナムで販売店と充電拠点の拡大を進める。販売台数を非公開としている。

ヤディアとBYDはコメント要請に応じなかった。

中国の小売業やIT大手もベトナム進出を加速させている。不動産会社CBREは8月、「24年終盤以降のホーチミン市の小売業の顕著な特色の一つは中国ブランドの進出と拡大だ」としてKKVなどのチェーン店の広がりを例に挙げ、首都ハノイでも同様の傾向が見られると指摘した。

市場調査会社Q&Meの今年10月の調査によると、中国の字節跳動(バイトダンス)傘下の短編動画投稿アプリTikTok(ティックトック)はベトナムで最も利用されている買い物用交流サイト(SNS)となっている。

中国のアリババ・グループ傘下のラザダはベトナムの主要電子商取引(EC)サイトの一つとなっており、騰訊控股(テンセント)はベトナムの主要EC企業のShopeeとTikiに間接出資している。

<投資の新たな潮流>

トランプ関税回避のための生産拠点移転を背景に、中国企業のベトナム投資がこの数年伸び続けている。ベトナム中国ビジネス評議会のスティーブ・ブイ会長は、ベトナム企業との合弁事業がより一般的になりつつあり、技術移転を伴うケースも出ていると話す。

ブイ氏によると、機密契約を除くと同評議会に加盟する中国企業12社が2025年、ベトナムの協業企業に技術移転を実施または計画している。24年には全くなかったことからも、ベトナムに長期的に関与していることが現れていると言及した。

これらの企業には、中国の電池メーカー寧徳時代新能源科技(CATL)が出資するCNTEも含まれており、同社は電池エネルギー貯蔵システム(BESS)を生産している。CATLはブイ氏が率いるデルタE&Cと提携してベトナム北部に工場を建設しており、26年10月以降に年間でコンテナ250個分の輸出を目指す。

CNTEは「技術支援」を提供していると説明した。

香港を含めた中国企業が25年1―11月にベトナム向けに表明した投資は総額67億米ドル超に上っており、ベトナムの統計によると中国が最大の投資国となっている。

ベトナム北部の主要工業団地のディープC工業団地の関係者は、ディープCで中国メーカーがテナントの4分の1を占めており、19年から10%増えたと明らかにした。

コンサルティング会社デザン・シラのダン・マーティン氏は、関税回避で始まった動きが今や「成長と同じくらいに保険としての側面も強」くなっているとし、中国企業の事業規模と多様性は「ベトナムの産業構造を再構築している」と評した。

ロイター
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