コラム

日本でテレワークを普及させるための3つの論点

2020年02月27日(木)16時00分

3つ目は、セキュリティーの問題です。テレワークを拡大するためには、無駄に高度なセキュリティーレベルの見直しをしなくてはなりません。非正規のメンバーに個人情報や企業機密へのアクセスを許す、発表前の新商品の情報を取引先と共有するなど企業にとって重要な情報を、在宅の端末、個人端末に流すというのは確かにリスクになります。

ですが、だからといってオフィスの環境に固執していては、今回の危機を乗り切ることはできないし、業務改善も実現しません。思い切って形式的にセキュリティーのレベルを高める方法から、本質的なリスクを考察して最適な防御策を講じるといった実務的なアプローチに変えるべきでしょう。

具体的には、これは法改正なども必要になりますが、企業機密や個人情報の悪意の漏洩や窃盗に関する罰則を強化するということが、まず必要です。これに加えて、金額的に非常に価値の高い情報に触れるレベルのメンバーには、非正規であっても十分な処遇をするべきです。テレワークの成功は、環境にかかわらずモラルの高い業務が実現することにかかっていますが、そのためには個々人には報酬で報いるのが正攻法だからです。

今回の感染危機については、当面の事態を乗り切るだけで終わらせるのではなく、これを機会に日本のオフィスワークの生産性を一気に挽回するぐらいの気持ちで取り組むべきだと思います。必要な法律や政令の改正に加えて、商慣行や労働慣行の見直しを緊急避難的に進めるべきです。その上で、効果を検証し、有効な改革については恒久化し、失敗した事例は改めればいいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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