- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 『スター・ウォーズ』完結、半世紀の米現代史を反映し…
『スター・ウォーズ』完結、半世紀の米現代史を反映した3つの3部作
これに対して、新3部作は2015~19年という比較的短い期間に制作されたことで、「2010年代後半」の時代を強く反映したものとなりました。まず、レイという強い女性主人公が据えられ、これを補佐するのはヒスパニック系とアフリカ系の男性ということで、多様性尊重の価値観が強く押し出されています。また、カイロ・レンという「弱さゆえに権力を志向する」人物像を悪役に持ってきたのも、この時代の世相を反映したものだと言えるでしょう。
この新3部作に関しては、オリジナルの4から6の3部作と比較すると、出来栄えは今ひとつという評価が定まっていますが、それでも多様性という問題、「弱さゆえの悪」というキャラクターなど、2010年代後半の時代を代表した作品にはなっていると思います。
けれども、時代の流れはどんどん速くなっています。2015年には新鮮に受け止められた女性主人公が、2019年にはむしろ「当たり前」になっています。また、カイロ・レンのような「人間の弱さ」の描き方というのは、やや陳腐になってきている、つまり社会がそうした「弱さ」に理解を示して無害化することを志向しつつあります。
そう考えると、2020年代の世界というのはまったく別の種類の葛藤や、対立を抱えていくことになるのでしょう。『スター・ウォーズ』がそれぞれの時代を反映したこと自体が、過去のものとなりつつある今、今度は2020年代という新しい時代がどのような時代になっていくのか、考える局面を迎えています。
SPECIAL EDITION「STAR WARS スター・ウォーズ完結編『スカイウォーカーの夜明け』への道のり」が好評発売中。登場人物に焦点を当て、シリーズの物語をたどり、ファンの視点で数々の場面を振り返る。表紙は公認アーティストのTSUNEO SANDA氏が描き下ろし。
【限定非売品の表紙ポスタープレゼント実施中】
ルーカスフィルム公認アーティストのTSUNEO SANDA氏が本誌のために描き下ろした表紙を、そのままB3変型判のポスターにした限定非売品を100名様にプレゼントします。応募方法はツイートするだけ。
詳しくはこちら
60年代学生運動『いちご白書』再び、ニューヨークのキャンパスが燃えている 2024.04.24
党議拘束の緩和こそ政治改革の決め手 2024.04.17
爆発的な観光資源となったアメリカの皆既日食フィーバー 2024.04.10
皆既日食で盛り上がるアメリカ 2024.04.03
大谷翔平の今後の課題は「英語とカネ」 2024.03.27
植田日銀の大規模緩和「出口戦略」は成功しているのか? 2024.03.20
『オッペンハイマー』日本配給を見送った老舗大手の問題 2024.03.13