コラム

トランプの対中貿易戦争は、共和党も民主党も暗に支持している

2019年06月11日(火)18時40分

興味深い実例は、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト達です。例えば、リフレ派経済学者で、ノーベル賞受賞で有名なポール・クルーグマンは、依然として「中国との通商戦争はアメリカ経済にマイナス」という立場を変えていません。

ですが、クルーグマンとはまた別の意味で有名であり、ニューヨーク・タイムズ紙の「顔」でもあるトーマス・フリードマン(著書に『フラット化する世界』など)は、別の立ち位置を取り始めています。

フリードマンは、以前と同様に「トランプは、アメリカの大統領には相応しくない」と大統領に批判的な姿勢は残しています。ですが、5月21日に発表したコラムでは、大統領の中国に対する通商戦争には支持を与えているのです。

このフリードマンの変節(?)は、かなり広範に話題となり、多くのリベラル系の識者や政治家に影響を与えています。また、現在2020年の大統領選を目指した民主党内の予備選が始まっていますが、当面のトップランナーであるジョー・バイデン氏には「オバマ政権の副大統領時代に中国と癒着した」などという非難がされています。

そして、多くの候補達が「国内雇用を優先する」という主張の延長で、事実上、中国との通商戦争を支持しているように見えます。

そんなわけで、アメリカ側の事情として、中国との問題は、メキシコのように簡単には解決しそうにありません。当面は、大阪G20が焦点となりそうです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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