コラム

日本で誤解されている都市型リゾートのビジネスモデル

2018年02月27日(火)18時00分

ちなみに、こうした会議は「見本市」とは違います。「見本市」というのは、3日間とか5日間という会期が設定され、広い会場に各社がブースを設ける、そこで新商品や新技術のアピールをするというものです。参加者は、情報収集や商談のために訪れるわけですが、基本は1対1のコミュニケーションになりますし、ブースを設ける側は会期いっぱい待機しますが、訪問する側は何日も滞在するわけではありません。

また、参加者は広い会場を動き回り、会場が大きいのでイベントの運営と宿泊や飲食は切り離されるのが普通です。幕張メッセや、ビッグサイトなどでイベントが行われる場合、宿泊は広い範囲のホテルということになります。

ですが、国際会議というのは違います。3日前後の日程で行われる期間、参加者はずっと会場に詰めて議論に参加するのです。大規模な会議の場合は、100人以上規模の分科会が5つとか10とかに別れて実施され、全体会議では大劇場が使われ、分科会用の会議室も含めると相当な規模の施設が必要になります。

良い内容の会議になればなるほど、日程はギッシリですし、また参加者同士の交流の場も設定されるということになります。また、多くの場合は、家族の帯同が許されて、会議の時間帯は、その家族は観光をしたりするわけです。

そうした数日間の滞在型の国際会議というのがIRのビジネスの最も「美味しい」部分です。そして、カジノというのは、参加者が白熱した議論に疲れた神経を解きほぐすため、また帯同した家族とのリラックスした時間の一つとして、提供されるサービスの一つという位置付けになると思います。

ビジネスとしては、まず国際会議の主催団体による参加費収入というのがあり、またIRの側とすれば会議の会場費、運営費、数日の滞在による宿泊費の収入があり、そして価格帯としては高めの飲食があり、そしてショッピングやカジノの収入があるということになります。

シンガポールのMBSという巨大なファシリティが成功しているのは、世界中からギャンブル好きが集まって豪華ホテルに泊まり、カジノに金を落とすからではありません。そうではなくて、優秀な国際会議というコンテンツがあり、そのコンテンツに相応しいハードとしてのMBSがあり、それを中心に経済効果があり、1施設で1万人(間接的な効果を含めて)という雇用を生み出しているのです。日本がIRというビジネスを真剣に考えるのであれば、この「国際会議ビジネス」を育てて行くことが大切です。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、30日午前に大統領令署名へ FRB議長

ビジネス

インドネシア証取CEO辞任、株価急落で時価総額80

ワールド

キューバに石油供給する国に関税発動へ、トランプ氏が

ワールド

トランプ氏、英国の中国接近をけん制 「非常に危険」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 10
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story