コラム

「カオス状態」のホワイトハウス、スカラムッチ広報部長は10日でクビ

2017年08月01日(火)15時40分

スカラムッチの解任理由ですが、CNNのグロリア・ボーガーが「ホワイトハウスの情報筋」の話として伝えたところによると(ということは、「リーク」は止まっていないわけですが)、「ホワイトハウスに放言家は大統領1人でたくさん」なので、「大統領以上に言いたい放題のスカラムッチは不要とみなされた」というのです。

確かにプリーバスやバノンに対するスカラムッチの非難は、本当に活字にできないような下品なもので、サンダース報道官によれば「この職責にある人物としては不適当」と言われても仕方がないのです。ですが、いくら匿名とはいえ「放言家は大統領1人でたくさん」という発言が漏れてくるというのは、やはり異常な状況と言わざるを得ません。

一方で、そのトランプ大統領の放言は、いまだに止まる気配がないばかりか徐々にエスカレートしてきています。ここ2週間の間にも大統領は「軍隊ではトランスジェンダーを採用しない」という発言をしていますが、この件については軍から事実上否定されています。

【参考記事】就任半年のトランプ政権、顕著になる「指導力」の不在

また「警察は被疑者の取り調べでもっと締め上げていい」という発言もあったのですが、全国の警察の現場から「自分たちは被疑者への丁寧な対応を心がけているのに、警察の権威を失墜させる気か?」などという反発が出ています。

問題は、発言の多くが怒りを買っているということではなく、「発言と政策のズレ」が決定的に拡大している、つまり、誰も大統領の言うことは「話半分」か「ほら話」にして聞き流すという状態に近いわけで、これは深刻な状況です。こうした状況を新任のケリー首席補佐官が抑えられるのかは、大きな課題です。

北朝鮮のミサイル危機が続くなか、ホワイトハウスがこんな状態なのは信じがたいのですが、当の大統領本人は「株価は好調。失業率も低下。ホワイトハウスのカオスなんてまったくない」などという、呑気なツイートをしているのですから困ったものです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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