コラム

トランプ政権移行チーム、「内紛」の真相とは

2016年11月17日(木)16時20分

Mike Segar-REUTERS

<政権以降チームで「内紛」が勃発したと米メディアは大騒ぎ。その背景には、トランプの娘婿クシュナー氏とクリスティ知事の根深い確執がある>(写真:大統領選ではトランプ当選に多大な貢献をしたクリスティ知事〔右〕だが)

 トランプ次期大統領の政権移行チームで内紛が発生したと、今週アメリカのメディアは大騒ぎになりました。まず、チームの中で安全保障を担当していたマイク・ロジャース元下院議員が15日、移行チームから離脱すると発表したのです。

 ロジャース氏は、2001年から15年まで7期14年、ミシガン州8区選出の下院議員として活躍、民主党にも人脈のある軍事や諜報の専門家です。NSA(アメリカ国家安全保障局)の盗聴問題がクローズアップされた際に、NSAを全面的に支持したことから、選挙区の離反を招いて引退していたのですが、かなりの大物でした。

 そのロジャースは会見で「自分を推薦したのはクリスティ知事(ニュージャージー州)だが、彼の人脈は全部外れる格好になりそうだ」と述べたので、騒ぎが一気に大きくなった格好です。そして、どうやら「クリスティ人脈」が外されたというのは、本当のことのようです。

【参考記事】動き出したトランプ次期政権、「融和」か「独自色」か?

 その背景について、CNNなどが大げさに伝えているのは、クリスティ知事とトランプの義理の息子(長女イヴァンカ氏の夫)であるジャレッド・クシュナー氏との間に確執があるというストーリーです。

 クリスティは、ニュージャージー州知事になる前に、連邦検事を務めていたことがあるのですが、2004~05年にかけてクシュナーの父親であるチャールズ・クシュナー氏に関する「脱税と違法政治献金」の捜査を指揮したことがあったのです。ちなみに、クシュナー家というのは、トランプ家と同様にニューヨークの不動産ビジネスを手広くやっている一家です。そしてユダヤ系であり、イヴァンカも結婚と共にユダヤ教に改宗しています。

 この12年前の事件については、結果的にチャールズは、罪状を認めて司法取引に応じたのですが、それでも当時のクリスティ検事は「禁固2年の実刑」までしか減刑を認めず、実際にチャールズはアラバマ州の連邦刑務所に収監され、1年間服役したのです。その際に、まだ学生だったジャレッドは、父親を執拗に追い詰めるクリスティ検事の姿勢に激しい憤りを感じ、それが人生の大きな転換点になったと伝えられています。

 報道によれば「刑法が恣意的なニュアンスで歪められる」ことへの憤慨から、刑法関係の学問を極めようと決心して、ハーバード(学士)、NYU(ニューヨーク大学、法学博士)で法学を学び続けたのだそうです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ANA、エアバス機不具合で30日も6便欠航 2日間

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    香港大規模火災で市民の不満噴出、中国の政治統制強…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story