コラム

トランプ当選の可能性はもうゼロではない

2016年09月23日(金)17時00分

Jonathan Ernst-REUTERS

<本選を直前に控えてヒラリーとトランプの支持率が拮抗してきている。景気、雇用の低迷感がジワジワと広がる中で、トランプという「ガラガラポン」への期待が徐々に高まる可能性が>

 米大統領選は、投票日まで残り50日を切り、最後のストレッチ(追い込み)に入りました。ですが、相変わらず選挙戦の内容は深まることはなく、品のない中傷合戦が続いています。

 そんななか、ドナルド・トランプ候補とヒラリー・クリントン候補の支持率は拮抗してきています。いつの間にか、全国規模の世論調査の数字も拮抗しているのです。

 政治情報サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」によれば、最新の「世論調査の全国平均」では、まず支持率の単純平均値で、

■ヒラリー・クリントン・・・46.0%
■ドナルド・トランプ・・・・43.4%

 と僅差になっています。一方で、実際の選挙制度である「州ごとの選挙人数予測」では、

■ヒラリー・クリントン・・・272人
■ドナルド・トランプ・・・・266人

 とほとんど拮抗しているという集計が出ています。また非常に稀なケースとして、「ネブラスカ州で、特殊ルールにより選挙人数が割れる」などの現象によって、最終的な獲得選挙人数が「269対269」で同数になる可能性を指摘する専門家もあります。

【参考記事】ニューヨーク連続爆発事件、大統領選への影響は?

 その場合は「大統領は下院が、副大統領は上院が選ぶ(但し議員1人1票ではなく、両院の各州議員団で1票)」ことになります。そんな可能性が取り沙汰されるぐらい、拮抗してきているというのです。

 8月の中旬、両党の党大会が終わり、トランプがイスラム教徒米兵の戦没者の両親を中傷して大炎上した時には、「ヒラリー楽勝」というムードが濃厚だったのですが、ジリジリと支持を落とし、国際社会としてはまったく受け入れられないこととは思いますが「トランプ大統領」誕生の可能性が、現時点では否定できない情勢となってきました。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story