コラム

「移民が先か? 英語が先か?」という選択肢

2014年01月07日(火)12時23分

 2014年が明けました。その元日に厚生労働省は2013年の出生数の「年間推計値」を発表しています。「103万1000人」というのがその「推計値」でした。戦後最低であるとか、これで人口の自然減が24万人になり過去最大だとかいう報道がされています。ですが、この2013年に関して言えば、年の前半には「もしかしたら101万人台になるかも」という「恐怖」があったことを思うと、とりあえず数字を見た印象としては「つかの間の安堵」があります。

 同時に合計特殊出生率が微増したということも言われていますが、これは主として40歳以上の高齢出産のケースが増えてきていることが背景です。第二次ベビーブームのピークであった一歳あたり209万人という「1973年生まれ」前後の人々が、40歳に達しても出産を続けている、その動きが微妙に数字を「踏みとどまらせて」いるのです。

 ですが、早晩この「第二次ベビーブーマー」は出産適齢期を卒業して行きます。そうなると、新たに親になる層の文字通りの「母体数」は年々激減してゆくことになります。そうなれば、年間出生数が「100万人を切る」のは時間の問題です。私はこの「100万」というのは、一つの前提となる数字だと思います。一歳あたり100万人の人口があって、平均寿命が85歳であれば掛け算をして8500万人になります。

 勿論、増加と減少のカーブで構成されている日本の人口動態を考えると、この「掛け算」そのものには意味はほとんどありません。そうではあるのですが、とにかく人口のベースとして100万人×85歳=8500万人という「計算」ができれば、人口が1億を切るという事態は相当に先になるでしょう。

 ですが、年間出生数が100万を切って、その後はどんどん減って行くということになれば、全体の人口が1億を切るというのは時間の問題になってきます。更にその先、8000万とか7000万とかいった数字も見えてくるのではと思われます。直感的な話で恐縮ですが、日本の場合は人口がある程度あって、規模の経済というものが動いていかないと、社会経済の崩壊が止まらなくなるのではないかと思うのです。

 例えば欧州にはベネルクス3国とか北欧諸国とか、日本より人口が少ないのに、一人当たりGDPで4万ドルとか5万ドルとかいう繁栄をしている国があります。ですが、多くの他のコミュニティと陸続きでもないし、「統合条約」によるヒト・モノ・カネの移動という効果のない日本の場合は、人口が1億を割っていくようでは、同時にGDPの年間3万ドルという「先進国レベル」から脱落してしまうという危機感は持った方が良いと思います。

 そこで避けられないのが「移民」の議論です。今回は年の初めに、この「移民」を巡る一つの選択肢を考えてみたいと思います。それは「移民が先か? 英語が先か?」という選択の問題です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米韓が通商合意、自動車関税15% 3500億ドル投

ビジネス

ホンダ、半導体不足でメキシコの車生産停止 米・カナ

ビジネス

イスラエル、ガザ停戦協定の履行再開と表明 空爆で1

ワールド

印パ衝突、250%の関税警告で回避=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 10
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story