コラム

特定秘密保護法案、絶叫ではなく議論が必要なら、その中身は?

2013年12月03日(火)12時47分

 例えば、軍事外交上の機密訓令に使われる暗号や、重要な施設に許可された関係者だけが出入りする際の暗証番号といった「既に秘密扱いが法令や社会通念上認められているもの」あるいは「既に秘密扱いが認められている対象の秘密を保持するための手段」などについては、丁寧に区分けをしてゆけば世論の理解も得やすいと思います。

 また、安全保障上の軍事バランス確保や、通商に関する外交問題など、「こちらの出方を相手に知られてしまっては、相手の行動が変化して当方の不利益になる」という種類の情報も、キチンと整理すれば何も世論は絶対反対とは言わないでしょう。

 いずれにしても、そのような「秘密扱いの認められる場合」の定義に関して社会的な合意ができることが必要です。こうした定義がないままに仮に「チェック機構」を作っても、結局はそのチェック機構全体が秘密というブラックボックスに包まれてしまっては、信頼感の醸成にはなりません。

 もう一つは、反対に「政府が情報を隠す」ことが、経済合理性や人命保護という観点から「マイナス」である場合です。例えば経済的に過大な譲歩をする約束を他国と交わしているとか、大変に危険な場所に自衛隊を派遣しているにも関わらず危険性を示す情報を隠しているというような場合もあるでしょうし、更に自衛隊の装備に関する入札に不正があったが防衛機密の名の下に不正行為を隠蔽しているというような場合も想定できます。

 そのような場合は、政府の「情報隠蔽という誤り」を暴露して政策を修正するという機能が、この社会には必要です。そうした観点から考えれば、内部告発者の保護、ジャーナリズムによる情報提供者秘匿の権利の保護といった制度を整備することが必要となります。

 こうした二つの観点から、どのようなケースでは秘密扱いが適当なのか、どのようなケースでは政府の秘匿した情報を暴露することに正当性があるのかを分かりやすく区分けしてゆく、「理解者を増やしたい」のであれば、そのような作業を誠実に積み上げてゆくしかないと思います。

 こうした点に加えて、私が心配に思うのは「適性評価制度」です。確かに機密を守るには、その機密に触れる人間が「情報管理の意図を理解し、その背景にある目的に同意し、その管理責任を自覚し、管理を実行できる」必要があると思います。この点で不適当な人間が情報に触れるようなことがあっては、事故の元だというのは否定できません。

 ですが「適性評価」を「制度化する」というのは極めて下手くそな、それこそインテリジェンスの世界の常識に反する手法なのではないでしょうか?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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